なぜ豚の死骸が大量に川に漂流していたのか。その理由として大きく2つの説がある。
1つは習近平政権下の「腐敗撲滅キャンペーン」だ。接待や宴会など飲食の高額かつ大量の消費が激減し、豚肉の消費が落ち込んだことが原因、という説だ。
中国の養豚農家は豚を高く売るために、よく砒素(ひそ)を餌に混入させる。砒素は劇薬だが、少量ずつ使えば豚の肌や肉の“色つや”を良くし「健康的な豚」に見せることができるのだという。
2013年、養豚農家は春節に出荷のピークが来ると予測し、豚を大量に肥育していた。ところが、中央政府による「公費支出の取り締まり」が強化され、春節前後に開かれるはずだった宴会が軒並み取りやめになってしまった。
養豚農家にとって問題となるのは、余剰豚の処分である。売り時を逃してしまった豚の内臓は、砒素による腐敗が進んでいるため、処分を急ぐ必要がある。
中国では主に火葬か埋葬で死んだ動物の処分を行う。近年は無公害処理が進み、嘉興市でもセメント造りの処理場で発酵処理をするようになった。ところが、処理場は狭く、1000頭も入れればいっぱいになってしまう。とても1万8000頭の死豚を収めることはできない。そこで、川に投げ入れられた、という説である。
ちなみに小さな川が網目のように流れる嘉興市では、以前から死豚は日常的に川に投げ捨てられていたという。
姿を消した死豚売買のブローカー
第2の説は「闇業者の取り締まり強化」が原因というものである。
筆者は浙江省某市政府の役人と話をしていたとき、こんな言葉を聞いてわが耳を疑った。「死豚の最終処理は一般家庭の食卓だ」――。