2度の前代未聞の悲劇で、マレーシア航空が倒産危機に直面している。破綻処理か、民営化か、あるいは上場廃止による完全国有化か。いずれにしても痛みを伴う厳しい選択で、一刀両断というわけにはいかない。かつて経営危機を乗り越えたガルーダ航空や大韓航空と同様、生き残れるか、まさに崖っぷちの状況だ。
どちらにしても、マレーシアのナショナル・フラッグ・キャリアであるマレーシア航空が再生するには、早急に大株主の政府系ファンドが介入する必要があり、同時に抜本的な構造改革も避けて通れない。
労使対立、高コスト体質、政府依存の経営・・・
長年の労使対立が招いた高コスト体質が原因の累積赤字は膨大に膨らみ、政府に依存してきた経営のツケも重くのしかかる中、たった4カ月間で計537人の犠牲者を出し、ブランドイメージは著しく低下。370便失踪事故の影響は第2四半期に反映される見通しで、8月中旬に発表されるが、大幅悪化は必至の状況だ。
2度目の大惨事に見舞われた翌日、7月18日午前のマレーシア株式市場で、同航空株価は前日比18%安までに大暴落し、年初来の下げ幅も約35%を記録。過去9カ月間の時価総額も40%以上落ちこみ、「倒産直前だ」(市場関係者)と危機的状況が続いている。
加えて、マレーシア航空は、希望者への年末までの航空券の払い戻しを発表。3月の事故以後も実施しなかった異例の措置で、「顧客の混乱や批判をかわすため」と、先手を打った形だが、大幅な売上高への影響は回避できない。
独自に入手した情報によると、撃墜事件が起きる前の6月、すでに乗客数は前年同月比で3%減少、5月の空席率も2009年以降で最悪と、2カ月連続で悪化した。4-6月期は一層厳しい結果が示されると予想される。
具体的には、3月の370便の失踪事故で、特に国際線の搭乗率が低下、5月は前年同月比で10ポイント以上も低い約69%にまで落ち込んだ。
また、撃墜事故のあと、予約取り消しが相次いでいるという。それもマレーシア国内にとどまらない。海外の旅行代理店関係者などによると、フランス開催のワールドカップに出場するため、マレーシア航空を予約していたサモアの女子ラグビーチームが、タイ国際航空に変更した。
撃墜事故後の乗客数のデータは公表されていないが、航空券のオンライン予約サービスを行っている「ウェブジェット」は、これまでで同社のマレーシア航空の予約の約4分の1がキャンセルされたと概算している。
当然、売上高が壊滅的な打撃を受けることが予想され、専門家などによると、マレーシア航空は、2度の惨劇に遭った今年は、少なくとも10億リンギ(約320億円)の赤字を計上すると見込まれてもいる。