「どうせがんで死ぬと思う」

 「今さら何を説明されたって被曝したことには変わりないし」

 放射線について正しい知識を持ってもらおうと、相双地区の中学校・高校では、南相馬市の坪倉医師らを招待して、放射線の授業を行っています(1)。

 「ほとんどの学生さんは授業に対して前向きの感想をくれます。でも、時々非常にネガティブな反応を返してくる学生さんがいるんですよ」

 授業の後に簡単なアンケートを行うと、最初に書いたような感想を寄せる学生が必ず数人はいるそうです。全員にポジティブな感想を期待したり押しつけたりしてはいけないのですが、それでもこのような子供たちの不満・不安を放置するわけにもいきません。

 あの時期、相双地区にいたことを今でも「負の遺産」と感じる人々の重荷を、どうしたら軽くできるのだろうか・・・。原発事故から3年が経ちましたが、解決の糸口は中々見つかりません。

放射線学者の葛藤

 南相馬市の仮設住宅で、南相馬アグリサイエンスカフェ(第3回の様子:2)という会が開かれています。

 これは除染研究所や相双を憂えた教育者・研究者の有志の方々によるNPOが設立した会で、相双地区を、特に農業をどのように復興させればよいだろうか、という内容を住民の方と話し合う会です。同時に放射線汚染についても正しい知識を持っていただこう、というセッションも開かれています。

 私自身は6月14日に開かれた第4回の会に出席する機会を得ました。放射線に対する基本的な知識に始まり、線量測定のデモンストレーションや、現在の南相馬市の外部被曝線量が、外国で言えばどの国と同じレベルなのか、などを原子力研究所の一流の研究者の方々からお話しいただきました。

 例えば成田とロンドンの往復で浴びる航路線量は約100マイクロシーベルト。南相馬市の外の空間線量は、高い所で1時間に0.2~0.3マイクロシーベルトですから、300時間、つまり南相馬市の一番線量の高い所で、建物に入らず12日間暮らし続けると同じくらいの被曝をすることになります。

 ちなみにロンドンの空間線量も南相馬市に匹敵する1時間当たり0.2マイクロシーベルトくらいあります。これは土壌に含まれるラドンの影響のようです。