至極当然の、科学と医療の正義に襟を正すような意見が出されました。
iPS細胞を用いた網膜疾患治療の臨床実験を進める理化学研究所・発生再生科学総合研究センターの高橋政代プロジェクトリーダーは「STAP騒動を大きくしたのは理研にも責任がある」として、危機管理の徹底を求めるとしてメディアの取材に応じました。
理化学研究所広報から発せられた不可解な声明
これに先立って高橋さんは6月30日「理研の倫理観にもう耐えられない」という消息をツイッターを通じて公開。
感情論でも抗議でもなく、純然と高度な臨床実験を行ううえで、理化学研究所という場所が何も信用できない、医師も患者も安心して身を任せられない場になってしまっていることを、今後のiPS臨床の継続を危ぶみSNS上で嘆きました。
ところが翌7月1日にメディアがこれに反応すると、理化学研究所広報から次のような高橋さんの声明が発表されます。
「ネット上で『中止も含めて検討』と申し上げたのは、様々な状況を考えて新規の患者さんの組み入れには慎重にならざるを得ないというのが真意で、中止の方向で考えているということではありません」
「臨床研究は予定通り遂行します。お騒がせして申し訳ありません」と高橋さんの声明が発表されます。
メディアは「理研研究者、iPS研究中止を書き込み後一転(読売新聞)」などと見出しを打って、これに追随する提灯報道を流しました。
さてはて、筋道を通すというのはこういうことだと思いましたが、高橋さんは直ちにツイッター上で、
「全く一転していません。中止と書いた訳でもないし、この環境で進め難いのも事実」と声明、さらにSNSのみならずメディアの取材に答えて、臨床医として、基礎科学者として、決然と通すべき筋をきっちりつけられた。
高橋政代さんは眼科の臨床医として出発、難治疾患の治療に再生工学が生かせることに注目して京都大学医学部の同級生、笹井芳樹博士と協力、世界で最初にES細胞から網膜神経細胞を誘導することに成功、今年の夏にはiPS細胞技術を用いて、網膜疾患患者自身の細胞を用いた網膜の加齢黄斑形成治療の臨床実験に取り組むべく、入念な準備を進めているところでした。