経営力がまぶしい日本の市町村50選(28)

 富田林市は大阪市の中心部から見て南東部に位置する、人口11万6353人(2014年5月31日現在)の市である。

歴史的建造物の町並みを生かしたまちづくり

 豊かな自然環境に恵まれ、中心部は戦国末期より富田林寺内町として発展し、歴史的建造物からなる町並みは大阪府で唯一の重要伝統的建造物群保全地区でもある。また2007年には「美しい日本の歴史的風土100選」にも選ばれている。

 これは財団法人古都保存財団(現・古都飛鳥保存財団)により、歴史的意義のある建造物や遺跡などとその周りの山丘や水辺などの自然的環境が一体となった、日本らしい風情を醸し出している全国100地域のひとつとして認められたことにほかならない。

 また、江戸時代の重厚な商家や町家が40軒ほど残っており、明治から昭和初期の古い民家も含めると200軒ほどが立ち並ぶ地区に住民が暮らす生きた博物館とも言える。

 市民は、このような身近な歴史的資産に愛着と誇りを持って保存活用に取り組んでおり、「富田林寺内町をまもりそだてる会」や「じないまちボランティア・ガイドの会」など自主的な活動団体が生まれ、町家の公開や「寺内町燈路」などのまちおこし事業を行っている。

 さらには、寺内町やその近隣の住民、商店会の有志による月1回の「じない市」や3月の「雛めぐり」イベント、若い人たちが古い町家を借りて創作品を売るお店など、地域住民が自らの力で古い町並みを活用しながら利便性の高いまちづくりにもチャレンジしている。

旧杉山家住宅(ウィキペディアより)

 なお2006年から開始している「じない市」では季節折々の風物をテーマにした設えで寺内町を彩る活動や、重要文化財である旧杉山家でのライブ開催などの活動をしているが、「じないまち散歩」と名称を改め、町の魅力発信にも力を入れている。

 住民や、本市に魅かれて店を始めて集まった市民が、町が醸し出す和の空間の心地よさを感じてもらおうと、毎月第2土曜日に季節ごとのテーマを決めて、おもてなしの心で行事を開催している。

 「雛めぐり」をはじめ、「あじさいめぐり」「お茶稽古」「古書めぐり」などや、江戸情緒が残る町ならではの旧家のレシピを再現した寺内町御膳や趣のある町家のスイーツカフェなど、多彩なプログラムが楽しめる「楽食 楽まち」などは地域の資源を活用した面白い取り組みである。

 これらの活動により住民間の関係性が良好に保たれたり、本市の魅力を対外発信したりすることにつながっている。