集団的自衛権を巡る朝日新聞社のネガティブキャンペーン(集団的自衛権 読み解く)は、政府が広く国民の理解を得るために掲げた具体的事例に対し、これを各個に撃破する手法を取っている。

 だがこの反対のための反対が高じ、論考が偏狭で記事の内容も極めて猥雑である。特に6月17日の朝刊に掲載された~「機雷除去」薄い現実味~は、事実を歪曲しているところがあり、この記事の取材に応じた1人として次の3点を指摘しておく。

中東に対する歴史認識の欠如

 第1に、戦火の絶えない中東に関する歴史認識に欠けている。

 この記事は、2011年のイラク戦争終結後、ペルシャ湾周辺で国家間の戦争は起きておらず、イランの現政権は融和路線を取っており、ホルムズ海峡を封鎖する可能性は極めて低いとしている。

 だが、中東全体を見れば、第2次世界大戦後、戦火が絶えたことがなく、そのたびごとに、機雷が紅海、ペルシャ湾及び、あるいいはオマーン湾で使用され、中東から石油などを運ぶ海上交通路の安全が脅かされてきたという厳然たる歴史的事実がある。

 ホルムズ海峡はその一部に過ぎず、現時点でイランによるホルムズ海峡の封鎖の可能性が低いからと言って「機雷除去」のすべてを「薄い現実味」と決めつけるのは極めて短絡的であり論理が飛躍している。

 さらに我が国への石油の輸送経路には、中東海域だけでなくマラッカ海峡など機雷の使用に対して極めて脆弱な海域が含まれていることを忘れてはならない。そもそも国防の要諦は、まずは抑止であり、次いで、たとえ現実味が薄いとしても万が一に備えることである。

 第2に、機雷除去の可否に関する根拠に客観性がない。

 この記事では、機雷の敷設は武力行使と見なされ、その除去も武力行使と見なされる、今の憲法解釈でできるのは、日本周辺に置かれた機雷を個別的自衛権を使って除去する場合と、停戦後に残された機雷を「危険なごみ」として処分する場合の2通りだとしている。

 だが、朝日新聞は、かつて湾岸戦争当時の連載記事「湾岸危機と日本10」の中で、「(イラン・イラク戦争当時、戦時でも)掃海艇派遣は問題なし」とした1987年8月の中曽根康弘総理の国会答弁を引き合いとした記事を書いている。

 つまり停戦後でなくても遺棄機雷の除去は可能だとの政府見解を引用していたのだ。