6月24日、東大病院は「SIGN研究に関する調査(最終報告)について」と題して、記者会見を行った。

東大病院が開いた記者会見(筆者撮影)

 この記者会見では、表題となっているSIGN研究のほかに、ノバルティス社(以下ノバ社)が不正関与したSIGN研究以外の4臨床研究、アルツハイマーの大規模調査研究「J-ADNI」、さらにブリストル・マイヤーズ社の臨床研究不正関与についても公表がなされた。

 今回の記事では、SIGN研究に絞って「最終報告」の内容を検討していきたい。

2倍以上の期間、3分の1以下の内容

 SIGN研究は東大病院に事務局を置く研究会組織TCCが主導して行った、慢性骨髄性白血病治療薬「タシグナ」に関する医師主導臨床研究である。研究責任者は東大病院血液腫瘍内科の黒川峰夫教授であり、運営を進めたのは黒川教授の部下A医師である(最終報告書ではA医師は実名であるが、研究代表者は黒川教授であることから仮名とする。引用部分も適宜修正する)。

 今年の1月17日、この医師主導臨床研究であるSIGN研究に、当該薬の製造元であるノバ社が不正関与していたとNHKに報道される。3日後の1月20日、ノバ社は社内調査を終え、不正関与があったとする記者会見を行う。

 東大病院は報道後、長らく沈黙するが3月14日に予備調査委員会の中間報告(以下中間報告書)として記者会見を行い、不正関与があった事実を認める。

 その後、東大病院はまた長い沈黙を再開する。この間4月2日にノバ社は社外調査委員会の最終調査報告書(以下ノバ社報告書)を公表し、翌4月3日には人事処分を行った。

 そして今回、最初の報道から5カ月を経て、東大病院はSIGN研究についての最終報告(以下最終報告書)を行った。

 つまりSIGN研究の一方の当事者であるノバ社は報道から2カ月半で、社外調査委員会の最終調査報告と人事処分も終えているのに、東大病院はその2倍の5カ月以上をかけて内部調査を行ったことになる。

 また内容量については、ノバ社報告書が96ページであるのに対して、東大病院の最終報告書の主要部分は28ページであり約3分の1である。もちろん報告書は長ければ良いというものではないが、この最終報告書は内容的にも問題が多い。以下内容を検討していこう。

そもそもこの最終報告書はどの程度信用できるのか?

 この最終報告書は、ノバ社報告書や実際の資料に照合すると、内容の信用性に疑いを抱かせる部分がある。それどころかこの最終報告書内だけでも、信用性を傷つける不自然な個所が存在する。

 その最大の点が黒川教授のノバ社不正関与への認識と関わりである。

 最終報告書の「SIGN研究特別調査 予備調査委員会報告書」(以下特記なきは同書)22ページでは「黒川教授は(中略)病棟にN社社員が出入りしていることやTCC の事務局機能が代行されていることを認識していなかった」(N社はノバ社)と記述されている。

 これは最終報告書の地の文の部分である。つまり予備調査委員会は以上の事実を認定した、ということになる。

 ところが黒川教授が上記のように「認識していなかった」とは到底考えられないような事実が、この最終報告書内にはたくさんある。