政府が意志を固めたとされる家事サービス部門への外国人労働者の受け入れ。政府はまず、今秋から関西の「国家戦略特区」で、外国人労働者を家事サービス部門に受け入れる方針だと伝えられている。この理由は、女性の社会進出を後押しすることだとされる。
一方、既に外国人の家事労働者の受け入れが広がっている諸外国では、外国人家事労働者に対する虐待事件が発生していることをご存じだろうか。
外国人家事労働者は「外国人であり女性である」とともに、その仕事内容や就労形態から「vulnerability(リスクにさらされやすいこと、影響を受けやすいこと)」の高い労働者と言える。
また、家事サービス部門への外国人労働者の受け入れは、本当に多くの女性の社会進出を促すことにつながるのだろうか。
公的なサービスの不足を補う「家事労働者」
経済財政諮問会議では、外国人労働者の受け入れを家事サービス部門に広げることが提案された。家事サービス部門は、言い換えれば「家事労働部門」と言うことができる。一方、読者は、「家事」や「家事労働」という言葉からはどんな仕事を思い浮かべるだろうか。
このことを考える上で参考になるのが、国際労働機関(ILO)の「家事労働者の適切な仕事に関する条約」(189号条約)だ。この条約は2011年6月のILO第100回総会で採択され、2013年9月5日に発効したが、日本はまだ批准してない。
条約の日本語訳を見ると、「『家事労働』とは、家庭において又は家庭のために行われる労働をいう」とある。また「『家事労働者』とは、雇用関係の下において家事労働に従事する者をいう」となっている。
「家事労働」は英語で「Domestic Work」、家事労働者は 「Domestic Worker」と記されることが多い。「Domestic」は「家庭内の」という意味だ。
つまり「家事労働」は料理、洗濯、掃除にとどまらず、育児や介護も含む家庭内での多岐にわたる労働を指す言葉であり、「家事労働者」は雇用関係の下でこれを担う労働者だと言うことができる。
すでに家事労働部門への外国人労働者を受け入れているシンガポールや香港などのアジア諸国や欧州では、外国人家事労働者を一般家庭が雇用し、住み込み・フルタイムの就労形態で、自宅での高齢者介護や育児を含む多様な家事労働を任せるケースが少なくない。