昨年4月、「電力システムに関する改革方針」が閣議決定された。この改革は、電力の安定供給を確保しながらも、電力料金を抑制し、なおかつ需要者の選択肢や供給者の事業機会を拡大することを目的としている。その進行は次の3段階を予定している。
1:広域系統運用の拡大(2015年めど)
2:電力小売業への参入全面自由化(2016年めど)
3:法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保、電気小売料金の全面自由化(2018~2020年めど)
この改革によって、我々の生活やビジネスにどのような変化が起きるのか。総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の電力システム改革小委員会下の「制度設計ワーキンググループ委員」であるSMBC日興証券・マネジングディレクターの圓尾雅則氏に解説してもらった。
圓尾 雅則(まるお まさのり)氏
――なぜ電力システム改革が行なわれるのでしょうか。
圓尾 これまで日本の電力業界は、1951年に発足した9電力体制を中心に動いてきました。9電力体制とは各電力会社(北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州電力。1972年の沖縄変換後は沖縄電力も含む)の地域独占を認める体制です。
9電力体制下では、電力会社間の競争が起こらず、総括原価方式により設備投資のコストを電気料金に上乗せすることができるかわりに、停電などを起こさないよう、電力を安定供給する義務が課せられていました。
なぜこのような体制が敷かれたかというと、当時の日本は戦後の経済成長が始まる時期で、右肩上がりに電力需要が増えていたから。電力会社間の競争を煽るよりも、地域独占を認めて、電力が安定供給されることを国は重視していたのです。
ところが、1990年代半ばから電力需要が伸びなくなります。9電力体制は右肩上がりの電力需要に対応するために作られたシステムなので、時代に合わなくなってきたのです。
そして、もうひとつはスマートメーター(電力使用量をデジタル計測し、内蔵された通信機能によって事業者に送信できるメーター)の誕生も影響しています。これにより、電力事業小売の現実性が出てきました。