前回の「森林資源の消費量が如実に示す世界の構造変化」では、一度使用した紙を再利用する古紙について述べた。

 昨今、中国で古紙の利用が進み、世界一の製紙大国になっている。そして、その生産量の約30%を日米欧からの輸入古紙に依存しており、その量は3000万トンと日本の紙・板紙生産量2600万トン以上である。しかし、国民1人当たりの生産量は決して多くない。

 このような傾向が、製紙用原料、すなわち森林資源にどのような影響を与えたのであろうか。この点に焦点を当ててみたい。

古紙の利用は省資源だが環境にはやさしくない

 表1に製紙用パルプの世界生産量を示した。製紙用原料は2000年には木材パルプが1億6830万トンで最も多く、次いで古紙の1億4300万トン、そして非木材パルプの1520万トンだった。木材パルプのうち最も生産量の多いのが、化学パルプである。

 化学パルプの大半はクラフトパルプ法という方法で、木材からセルロースを主体として抽出し、約50%をパルプに、残り50%をエネルギーとして再利用する。その過程で、必要な蒸気、電力を賄うことができる。従って、石油、石炭などの化石燃料への依存を最小限に抑えられる。

 また、使用する薬品も回収することができる。植林木を使う限り、二酸化炭素の発生量は木が蓄えた空気中のもの由来であり、化石燃料とは異なる。すなわち、カーボンニュートラルである。強度も最も強くできる。

 その他、木材パルプにはセミケミカルパルプ、機械パルプなど、用途に応じたパルプがあるが、やはり植林木を使う限り、環境への負荷は最少にできる。非木材パルプは、主として発展途上国で使用される。原料は、ワラ、竹、バガス(サトウキビの搾りかす)などである。量は多くない。

 2000年と2012年の世界の生産量を比較すると、木材パルプの合計は2000年に1億6830万トンであったが、2012年にはほぼ同数の1億6890万トンだった。すなわち、10年以上にわたって増加していない。非木材パルプも同様である。