松竹氏によれば、抑止力とは「軍事力を行使することによって、『抑え、止める』のではない。軍事力を実際には行使することなく、侵略があったら反撃するよ。打撃を加えることになるよという意思、能力を相手国に示すことによって、相手国の侵略を未然に防ごうというのが、抑止力のもともとの考え方」ということだ。

 まさしくその通りで「核抑止力」は、いざとなれば核兵器で反撃し、壊滅的な打撃を与えるよという意思を示すことによって、相手国の侵略を思いとどまらせようとするものである。

抑止力は自衛力より強大

 ちなみに日本の自衛隊は、自衛隊法第3条第1項により「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」ものとされている。要するに「自衛のための必要最小限の実力組織」ということであり、抑止力は持たないのが建前となっている。

 松竹氏によると『国際政治辞典』(猪口孝也編、弘文堂)では、「抑止作動の条件」という項目で、その第一条件として「いかなる軍事攻撃にも即座に対応し、甚大な被害を攻撃国に与えることでその軍事目標を阻止することが可能な軍事能力を備え(ていること)」が挙げられているそうである。

 日米安保条約に基づいて、日本には米軍が駐留している。この米軍の最大の存在意義は、まさに抑止力にある。なかでも決定的な抑止力が、結局は核抑止力ということである。

海兵隊の存在は明確な抑止力

 よくアメリカの海兵隊は日本防衛のためには役に立たないと言われる。確かに米海兵隊はそもそも防衛的な任務は持っていない。主な任務は、海外の紛争地点の基地を奪取するための上陸作戦である。したがって、普天間基地の辺野古移転に反対し在沖縄の海兵隊の撤去を求める勢力が言うように、直接的に日本防衛(沖縄防衛)の任務を持っているわけではない。