黒川清・日本医療政策機構代表理事監修
1. 国際医療支援団体の支援 その中身
前回、フィリピンでの台風ヨランダのケースを事例として、国際支援団体の被災地への到着、現地側のコーディネートの様子などをお伝えした。今回も引き続き、2013年の11月23日からフィリピンの台風災害支援の任にあたる筆者が、この事例をもとに、国際医療支援団体の支援の中身について見ていきたい。
まず Project HOPE について簡単に紹介したい。Project HOPE は、1958年に設立された米国バージニア州に本部を持つ国際医療支援団体だ。
当初はドワイト・アイゼンハワー大統領令により払い下げられた元米国海軍の病院船を所有し、その病院船に医療ボランティアなどを乗せ、世界各地で医療支援を展開していた。
戦時以外に運用された初の病院船であり、白い船体にHOPEと大きく描かれた船を覚えている米国人も多い。その後、船は老朽化のため処分され、現在は、災害医療支援や途上国での医療教育プロジェクトなどを実施している。
民間の国際医療支援団体として世界各地で活動する一方、現在も米国陸海空軍と結びつきが強く、米国海軍の人道支援プロジェクトの実施にあたり、Project HOPEがボランティアスタッフを派遣するなど、米軍との共同プロジェクトも数多い。
2. 医療ボランティア派遣地域の決定
Project HOPE が災害時に実施する支援として、最も一般的なものが、医療ボランティアの派遣だ。これは Project HOPE のみならず、国境なき医師団など多くの国際医療支援団体でも見られる支援形態だろう。
Project HOPE の場合、米国の医師や看護師が事前に登録できるオンラインデータベースがあり、その登録ボランティアに対して、災害発生時、ボランティア出動が可能か、呼びかけることとなる。派遣期間は、だいたい21日間であり、その間、ボランティアは勤務先の病院などから休暇を取り、現地に向かう。
全米の大規模病院のなかには、Project HOPE を組織的に応援している病院もいくつかあり、そのような病院では、病院側がこのような災害派遣時の休暇取得を後押ししているなど、環境が整っている場合もある。
さて、なかなか難しいのは、彼らボランティアをどこに派遣するか、という意思決定だ。
ご覧のようにボランティア側も、それなりにやる気を持って、休暇を利用して人道支援にあたろうとしている。一方で、後方支援の届かない被災地の真っただ中に送ることも安全上難しい。かと言って、全く安全かつ災害支援ニーズがないようなところに送っても、そもそも意味がない。
ある程度現地のニーズがあり、一定の安全が確保できる地域を選ぶこととなる。このあたりは、現地政府組織と折衝を重ねたり、実際に各地を訪れて決定することとなる。