米国のオバマ大統領の来日が迫ってきた。東京での日米首脳会談では、改めて米国の対アジア政策が論じられるだろう。その米国の対アジア政策での焦点は、オバマ政権の「アジアへの旋回(Pivot)」戦略である。「アジアへの再均衡(Rebalance)」とも表現される。

 だがその実行はまずできないのではないか、という率直な意見が米国防総省の担当高官から表明され、ワシントンの政策形成者たちの間で論議や懐疑が再び燃え上がっている。

 「アジアへの旋回」は、米国がイラクやアフガニスタンに投入してきた軍事力が両国からの撤退で余裕ができた分、アジア・太平洋に回すという軍事主体の新戦略だった。オバマ政権はその第1期の2011年末頃から概要を打ち出し始めた。当初は国防総省の「空・海戦闘」戦略という一連の軍事強化政策が土台となった。

 だがその後、この政策が変容を遂げていく。現在では「アジアへの旋回」の中身は極めて曖昧になってしまったと言える。

当初の戦略は中国が“仮想敵”だった

 当初の「空・海戦闘」戦略は、「海洋戦略」「空軍力」「海軍力」「サイバー攻撃力」「宇宙開発」という5分野に及んでいた。具体的な内容としては以下のような目標が挙げられた。

・中国の新型の対艦ミサイル破壊のための空海軍共同作戦

・米軍用の人工衛星の機動性の向上

・中国の「接近阻止」部隊への空海両軍共同のサイバー攻撃

・有人無人の新鋭長距離爆撃機の開発

・潜水艦とステルス機の合同作戦

・海空軍と海兵隊合同の中国領内の拠点攻撃