日本の現行の調査捕鯨は国際法違反とする国際司法裁判所(ICJ)の判決を受けて、政府は違法とされた現行の南極海での調査捕鯨の中止を決めた。
しかし、今後の対応については明確な方針を示していない。規模を縮小して調査捕鯨の再開を目指す、というのが水産庁の意向だと報じられているが、停止状態にある商業捕鯨の代替として調査捕鯨という便法を使う日本の捕鯨のあり方が限界にきていることは明らかだ。規模縮小という弥縫策で対応すれば、ICJの判決で力をつけた反捕鯨の国際世論は、さらに厳しくなることが予想される。
まさか「全面敗北」の判決になるとは
今回の判決は、日本外交の失敗だと報じられている。反捕鯨の国際世論を捕鯨容認に転換させることができず、大きな貿易相手であり友好国であるはずのオーストラリアから提訴されたうえ、「負けることはない」という読みまで間違えたのだから、外交の失敗であり、安倍晋三首相が失望を表明し、裁判にあたった官僚を叱責したというのも当然かもしれない。
私は水産庁の「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」の委員として、捕鯨についての政策論議に関わったことがあるが、豪州の日本提訴について、水産行政に関わってきた人たちの見方は「盗人たけだけしい」といった認識で、日本が負けることはあり得ないという楽観論がほとんどだった。
私自身は、国家間の争いがICJにかかると、五分五分という結論になることが多いと聞いていたので、ある程度の規模縮小は求められるかなと思っていたが、「全面敗北」とは思っていなかった。正直に言って、判決には驚いた。
追い越し禁止の道で、前の車が意図的に速度を落として、進路を妨害したので、やむをえず追い越しをしたら、前の車から警察に通報された。こちら側にも正当な理由があると安心していたら、裁判所でこちら側だけが罰金を命じられた。今回のICJ判決は、そんな印象で、なぜ日本が調査捕鯨という便法を使わなければならなかったのか、という事情について、せめて情状酌量もあると思ったが、判決の要旨を読む限り、その部分については、まったく取り合ってもらえなかったようだ。