本記事は4月10日付フィスコ企業調査レポート(ラクオリア創薬)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 浅川 裕之
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新世代の創薬技術で他社をリードする立場
ファイザー日本法人の中央研究所がファイザーから分離独立してできた、「創薬開発型」バイオベンチャー。医薬品の中核となる化合物を創出し、その特許を製薬企業にライセンスアウト(導出)して収入を得るのが事業モデル。疼痛と消化器官の領域の医薬品開発において、高い技術力と豊富な実績を有している。
同社の創薬技術の強みは「イオンチャネル」を作用点とする医薬品の開発にある。「イオンチャネル」に作用する医薬品は、新世代の創薬技術とされており効果や安全性に対する期待も大きい。しかし未解明な部分も多く、難易度が高く参入障壁も高い創薬技術とされている。この領域において同社は、ファイザーから継承した豊富な知財、ノウハウ、人材及び機器類を活用し、他社をリードする立場にある。共同研究のニーズも多く、同社の事業モデル成功のための礎となっている。
2014年~2016年の新中期経営計画における業績目標は、蓋然性の高い(有力なパイプラインと成り得る)プロジェクトのみを織り込んで作成されたものだ。詳細を検討すると、収入面では一段の上積みも十分期待できる内容である。一方経費の面では、名古屋大学との産学協同研究プロジェクトを開始することで、研究施設にかかる費用を大幅に節減できる目途が立った。また、名古屋大学の持つ最先端の研究テーマの有効活用などでメリットを享受できる可能性もある。今中計は同社にとって、経営の安定と事業の継続性に向けた重要なものと言えよう。
Check Point
●「革新的な新薬の種」を創出しライセンスアウトを行う事業モデル
●ライセンスアウト済みのポートフォリオにはすでに計7種類
●中計は研究開発の収益化と費用の圧縮にフォーカスしたものに
会社概要
ファイザーの日本法人の研究所を引き継ぎ事業をスタート
(1)沿革
同社の前身は世界的医薬品大手である米ファイザーの日本法人の中央研究所だ。同研究所は、ファイザーの探索研究拠点として、「疼痛」及び「消化器疾患」を中核に創薬研究を行っていたが、2007年に閉鎖が決定された。
閉鎖の決定を受けて当時の所長及び一部の従業員がEBO(エンプロイー・バイ・アウト:従業員による買収)によって独立及び創薬事業の継続を決意し、同社が誕生した。設立は2008年2月で、同年7月に人的・物的資産、研究開発ポートフォリオ、及びその他を継承して事業がスタートした。証券市場には、2011年7月に大阪証券取引所(現東京証券取引所)JASDAQ市場グロースに上場した。
社名の「ラクオリア」は、太陽を意味する「Ra」と、感覚の質感を表す「Qualia」を合成したものだ。「Ra」には社員の情熱や輝き、暖かみを表し、「Qualia」は研ぎ澄まされた感覚を活かして価値ある新薬を創るという意味を持っている。