昨年の今頃、私より二回りは若い日本人の友人と、Fika(お茶を飲んでおしゃべり)をしていた。彼女はこの1年ほど前に渡欧し、スウェーデン人のボーイフレンドと一緒に住んでいる。
化粧は濃くはないが、つけまつ毛をし、エクステンション(つけ毛)もたまにし、鮮やかでアートなつけ爪もしており、おしゃれに関心がない私とはあらゆる意味で正反対だ。周囲の人には、恐らく「仲良しの母娘」に見えているだろう。
ある日突然、消えるようにいなくなる人たち
日本にいたら恐らく接点を持つことはないであろうこんな人たちとも、日本人が希少な土地では「日本人どうし」というだけの理由で、一緒に買い物をしたりランチを食べたりできてしまうのだ。
その彼女が、「ネイルサロンでいつも爪をきれいにしてもらっていた人が、突然辞めて国―ベトナム―に帰ってしまった」というようなことを言っていた。
こういう人がたまにいる。ある日突然、消えるようにいなくなってしまう人たち。「どこに行ったの」と聞くと、ほぼ例外なく「自分の国に帰った」と説明される。
「国には仕事がない。家族が食っていくことができない。だからスウェーデンに来た」「子供を大学に行かせたいので、そのお金を貯めるために家族と遠く離れてここまで来た」と言っていた人たちが、なぜ突然、逃げるようにいなくなってしまうのか。サヨナラも言わずに。
その友人の話によると、爪のケアをしてくれていた女性は、1日10時間、週7日間とも休みを取らずにサロンで働いていた。国の家族へ1クローナでも多く送金するために、それこそ寝食を惜しんで仕事をしていた人なのだ。
そしてこれは、数年前に実施された、移民政策の大改革によって引き起こされている問題なのだということが、その後次第に分かってきた。
移民政策の大改革
2008年に国会を通過した外国人法改正は、メディア上では「史上最大規模の移民政策の改革」と謳われ、その後2010年には、さらに労働移民の自由化を図り、入国・居住する者を有効に労働力として活用することを目的とした法が導入された。
これらを通してスウェーデンは現在、欧州国の中で最も自由な労働移民制度を敷いている国の1つになった。