流行があまりないと言われるパリで、いま、1種類のお菓子を売る専門ショップが続々と登場して人気を集めているという。

 甘いものには目がない私。ほぉ! と特に心が惹かれたのは、アメリカ風チーズケーキ専門店だ。チーズケーキは日本では当たり前に売られているのに、パリでは最近までメジャーではなかった。

She's cake を切り盛りするセフォラさんは、30のレシピを紹介した本『She's cake: 30 recettes gourmandes de cheesecakes』も出版している(写真提供:すべて She's cake)

 これはパリだけではない。以前住んでいたイギリスでもアメリカ風チーズケーキはほとんど店頭になかったし、いま住んでいるスイスでも状況は同じ。あんなにおいしいチーズケーキが、どうしてヨーロッパには売っていないの? と不思議だった。

 パリで She's cake を開いたセフォラ(Séphora)も、同じ気持ちだった。

 「パリにはチーズケーキを売る店がない。それなら私が作ればいいわ!」と始めた彼女の店は、後追いする店が出てきても不動の人気を誇る。

 地元メディアが「パリで一番おいしい」と褒めるセフォラのチーズケーキを味見に、そしてセフォラに話を聞いてみたいと She's cake を訪ねた。(文中敬称略)

とにかくチーズケーキが大好きで始めた店

セフォラさんのチーズケーキは円型が基本。試食してみたが、ボリューム満点で1個でお腹いっぱい、幸せな気分になった

 ああ、この濃厚さにしびれる! と舌の上でとろけるセフォラのケーキを味わいながら、ガラスの壁越しに忙しく働く彼女を見た。ケーキを並べたショーケース、十数席がある店内は(このほか外にも席あり)、キッチンに続いていてセフォラがケーキを作る様子が見える。

 私が訪ねた夕方、セフォラは小型のケーキをずらりと並べたプレートを何段も重ねてオーブンに入れ、大型のケーキも何個も作っている最中だった。

 「チーズケーキが大好きなんです。製菓学校で勉強したときに一通りのケーキの作り方を学んで、そのときチーズケーキも学びました。2年前にここを開店したときは、パリにチーズケーキを売る店はなかったんですよ」

 質問にハキハキ答えてくれる29歳のセフォラは、She's cake サイトで見ていた印象通り、とても明るい。パリの日系パティスリーで半年間修業し、いくつかの店でも腕を磨いて、この店を開いた。