前回(「できることは限られている今の『操縦自動化』システム」)は、ITS(Intelligent Transport Systems)の技術的課題に関して、主に「レーンキープアシスト」の開発状況と限界について解説した。
他に昨今、市販車への導入が進んでいる「ドライバー支援システム」として「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」がある。
「クルーズコントロール」は、目標速度を設定すると車両側で速度変動を検出し、原動機の出力などを調節して、その目標速度を保つものだが、これに前方を走る車両をレーダー(電波やレーザーを使用してその反射から物体の存在を判別する)やカメラを利用して検出し、お互いの距離(車間)や相対速度を演算、それに応じて速度を変化させる機能を加えたのが「ACC」である。
これを使って走ると、確かに前走車を“発見”するとそこからの車間を設定レベル(長短を選べるものがほとんど)に保つようにクルマが車速を調整するので、ドライバーはアクセルペダルに置いた右足を動かさずに済む。最新のものでは停止まで自動的に行い、再発進は「速度回復(RES)」スイッチなどをひと押しするだけ、渋滞の中でこれを使って前車追従走行も可能になっている。
現状のACCは「視線」が初心者ドライバーのレベル
しかしそれがドライバーの運転への意識を低下させる、といった問題以前に、まだまだ弱点は少なくない。何より、現状のシステムは「すぐ前を走るクルマ」だけを注視して速度を合わせ、車間距離を維持して走る。そのため前走車が速度を変動させると、その変動を“増幅”する形で速度を上下させてしまう。自車の後方、側方にもクルマが連なっている状況では、それらの車群全体の速度変動を増やし、(ACCではなくドライバーが速度管理をする車両に交じった流れの中で)クルマの流れをギクシャクさせる存在になっているのが現状である。
「若葉マーク」をはじめ習熟度が低く、「高速道路を走るとフラフラしてしまう」「クルマの流れに乗って走れない・・・」というドライバーに対して我々が基礎トレーニングをする場合、まず「遠くを見る」ことから始める。慣れないとどうしても直前のクルマばかり見てしまう。
この「直前車注視」だと、前車の後ろ姿が近づくとアクセルを戻し、ブレーキを踏み、車間が開いたのに遅れて気づいてアクセルを踏む、という繰り返しになり、速度変動が大きくなる。自分が向かってゆく先の景色に視線を延ばしていれば、そこに車群が連なっていても全体の流れに合わせてゆるやかに速度をコントロールできるし、その中で直前のクルマが近づいてきたり、ブレーキランプが点灯したりしても、それは必ず視界の中にとらえているから反応できる。同時に遠くまで視線を延ばし、そこにクルマを進めてゆく「ライン」を描いて、そこに乗せてゆくように柔らかくステアリングを動かし、保持すれば、横方向のふらつきも小さくできる。