宮崎県の口蹄疫問題で、宮崎県と農林水産省との間の溝が深まっている。

 爆発的に広がった家畜の被害を巡り、県と国は一時期、初動態勢の不備について責任のなすり合いをしていたが、その後は事態の沈静化に向けて協力し合っているかに見えた。

 ところが、鹿児島県で7月20日に子牛のセリが再開されることが決まり、宮崎県内でも家畜の移動・搬出制限の解除がタイムスケジュールに上るようになったことで、国と宮崎県の姿勢に食い違いが目立ってきた。

 口蹄疫の終息宣言を急ぐ宮崎県に対し、拙速を危惧する農水省が慎重な対応を求めるという構図が出来上がりつつあり、お世辞にも良好な関係とは言い難い。

東国原知事が種牛の延命を要請、山田農相は激怒

 先週の報道で多くの人が耳にしたように、宮崎県で飼育されていた種牛の扱いを巡り、東国原英夫知事と山田正彦農水相との間で一触即発のバトルが繰り広げられた。

 ことの次第を簡単に整理しておけば、高鍋町の農家が、自家で保有する種牛6頭について、ワクチンの接種を拒否し続けてきた。これに対して東国原知事は、当初、口蹄疫対策特別措置法に基づく殺処分を受け入れるように勧告した。

 ところが、この農家は知事の勧告に従わず、種牛を県に無償で譲渡するので、延命させたうえで宮崎牛の再興に役立ててほしいと訴えた。

 種牛の飼育者である薦田(こもだ)長久さんは72歳。全国的にも高い評価を受けている畜産農家で、種牛以外の約400頭の牛については、すでにワクチン接種と殺処分に応じている。6頭の種牛はかつて九州産の牛として初めて全国1位に輝いた「長久号」の子孫で、それだけに愛着も深かったのだろう。

 すでに宮崎県が保有する種牛は5頭しか残っておらず、知事としても経過を見守りながら、時機を見て対応を検討する腹積もりになったと思われる。

 結局、口蹄疫への感染は認められなかったため、東国原知事は7月13日の山田農相との会談の席で、この種牛6頭の助命を嘆願した。

 山田農相は激怒し、宮崎県に早急な殺処分を求めたが、東国原知事は逆に国の対応を批判し、政府と県との対立が誰の目にも明らかになった。

明るみに出た宮崎県による「口蹄疫の感染隠し」

 6頭の種牛については、15日の午後になって突如、宮崎県が殺処分の受け入れを表明し、一応の決着を見た。

 15日の朝刊では宮崎県による「口蹄疫の感染隠し」が報じられている。スクープ記事によって窮地に立たされた県側が、やむを得ず譲歩したとの見方もできなくはない。

 読売新聞によれば、「県の家畜保健衛生所の職員らが先月、同県新富町の農家で口蹄疫が疑われる症状の牛1頭を発見しながら、検査や国への通報をしないまま殺処分していたことが14日、わかった」という。