バンクーバー新報 2014年2月6日第6号

 昨年のNHK放送「BS世界のドキュメンタリー」で高視聴率を記録した「かつては敵だった」(原題:Once Were Enemies - Peleliu)は、日米元兵士達の再会を描く映画。制作者は90年代から様々なドキュメンタリー映画を撮り、テレビシリーズでもジェミニ賞等を受賞しているエヴァ・ヴンダーマン(Eva Wunderman)監督だ。

ストーリー

 太平洋戦争中の1944年、日本軍とアメリカ軍がパラオのペリリュー島で激しく戦った。空、海、陸から攻めてくるアメリカ軍と、ジャングルの洞窟を拠点に2カ月以上抵抗を続けた日本軍。

 敗戦を知らずに1947年まで生き延びた日本側の生存者は1万人中わずか34人(既に捕虜だった約200人を除く)だった。60年ぶりにペリリュー島を訪問したアメリカ人と日本人の元兵士達は元戦地で再会した。

戦争のこたえを求めて

エヴァ・ヴンダーマン監督

 戦争映画には必ず賛否両論がつきものだ。誰も自国の非を責められたくないし、過去に全く興味のない人もいる。

 「でも私はスウェーデン系のカナダ人。日本人でもアメリカ人でもない。だから第三者の立場からこの戦争を描きたかった」とエヴァ・ヴンダーマン監督は言う。

 この映画を作るきっかけとなったのはある一冊の和書との出会いだった。それは舩坂弘氏の『英霊の絶叫-玉砕島アンガウル戦記』(FALLING BLOSSOMS)でとても深く感動したという。

 そして台本のない、ペリリュー島でのドキュメンタリーを構想した。撮影から完成までおよそ10年かかった。

 初め日米の元兵士達には相手の存在を知らせずに上陸してもらった。歴史家のエリック・メイランダーさんが別々に案内して島で引き会わせる計画をした。そしてその前夜にアメリカ側に、当日になって日本側にお互いの存在について知らせた。

 ヴンダーマン監督はこの2つのカルチャーの全く違う緊張感が興味深かったと言う。中でも「アメリカ兵を見た瞬間の土田さんの顔を見て」と監督は微笑む。

 その日から元兵士達は言葉も通じないのにお互いを知ろうと座談会を始めた。スチール・カメラマンとして同行したバンクーバー在住の斉藤光一さんが彼らの通訳を務めた。