米国のオバマ政権内部には軍部も含めて「中国が台湾や日本に軍事攻撃をかけてきても米軍は介入すべきではない」という意見が広まっている――。こんな恐るべき実態が最近の米国議会の公聴会で明らかにされた。

 日本の固有領土である尖閣諸島を中国が狙い、領海に侵入しても、オバマ政権は決して正面から抗議しない。まさにその弱腰を説明する証言だった。もちろん日本にとっては深刻な黒雲である。なにしろ日米同盟が機能しない事態が起きうるのだ。

「台湾や日本より中国が重要」と考える人たち

 オバマ政権内部のこの反戦、厭戦の志向は、1月30日の米中経済安保調査委員会の公聴会で明らかにされた。この委員会は連邦議会の政策諮問機関として、米中経済関係が米国の国家安全保障にどう影響するかを調査する。

 この日の公聴会は「中国の軍事近代化と米国にとってのその意味」が主題だった。オバマ政権の政治、軍事、諜報などの各機関や民間の大手研究所から合計10人の中国軍事関連専門家たちが証人として登場し、中国の大軍拡とその米国にとっての意味や影響について見解を述べた。副題は「中国の現在と将来の軍事能力」「中国軍事近代化へのインプット」「中国の軍事近代化の戦略的インパクトと米国側の選択肢」などとなっていた。

 そのなかで注視すべき証言をしたのは、民間研究機関「大西洋協議会」上級研究員のロジャー・クリフ氏だった。クリフ氏はアジアの安全保障、特に中国の軍事動向の専門家である。国防長官の直轄機関で働いたこともあり、歴代政権の国防総省内部の実情に詳しい。

 その同氏が今回は「中国の軍事近代化の戦略的インパクトと米国側の選択」について、前述の公聴会で意見を述べた。中国の軍拡に米国はどう対応すべきか、についてである。