来る5月、欧州議会選挙が行われる。EUの中で唯一、民主的に選挙で決まるのが、この欧州議会だ。他の機関には、EU市民の意見は直接的には反映されない。
EUの前身というのは、1951年に結成されたヨーロッパ石炭鉄鋼共同体。これは、西ドイツ、フランス、イタリア、そしてベネルクス3国により、石炭と鉄の管理と生産を統合することによって、将来の紛争(戦争)を防ぐことを目的として作られた組織だ。
それまでは、石炭と鉄が、ヨーロッパ大陸での争いの永遠のテーマだった。そして、この共同体に、新生西ドイツは、経済復興と西ヨーロッパへの帰属の望みを懸けたのだった。
57年にはこの6国が、ヨーロッパ経済共同体(EEC)とヨーロッパ原子力共同体を設立した。さらに67年には、この3つの共同体を、ヨーロッパ共同体(EC)として一本化。これが92年、EUとなり、今に繋がっていく。
現在のEU加盟国は28カ国で、元々の6カ国のほか、イギリス、デンマーク、ポーランド、チェコ、バルト3国のラトヴィア、エストニア、リトアニア、ルーマニア、ブルガリア、スペイン、ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、キプロス、オーストリア、スウェーデン、ハンガリー、スロヴェニア、スロヴァキア、マルタ、フィンランド、そして、去年の7月よりクロアチアが加わった。そのうち、通貨としてユーロを使っているのは18カ国だ。
欧州議会選挙に関心を持たない市民
さて、前述の欧州議会の直接選挙が始まったのは1979年で、議員の任期は5年。つまり、以来5年ごとに選挙が行われ、今回が8度目となる。ただ、選挙の規定に関する管轄は各加盟国にあるので、選挙制度は統一されていない。
各国が、各国のやり方で選挙を行い、選ばれた議員が欧州議会を形成するということになっている。今年の選挙は、5月の22日(木)から25日(日)の間に行われる。ドイツでは、選挙はいつも日曜日なので、25日が投票日となる。
ところが、この欧州議会選挙に対するEU市民の関心が薄い。5月に選挙があるということすら、知らない人は多い。欧州議会に誰が座り、いったい何をしているかということにも、あまり興味がない。
ヨーロッパは一つなどと謳われているが、実際にヨーロッパにいると、それを言っているのは政治家ばかりで、市民の間で実感としては感じられない。