当連載では日本の農業改革について主に農地維持の視点からいろいろと書いてきました。しかしこれから日本の農地が減っていくのは確実です。いわゆる中山間地と呼ばれる、平地ではなく山あいにある農地を支えている集落が減っていくことが予想されるからです。
いわゆる「限界集落」(55歳以上の住人が総人口の50%を超える、近い将来消滅が予想されている集落のこと)が本当に消滅するということです。
危機的状況にある山間部の集落
実際にどの程度消滅するか、共同研究会「撤退の農村計画」が京都府の中山間地を対象に行った調査によれば、消滅危惧集落数は、2020年で18、2030年で61でした。中山間地の総集落数は947集落なので、2020年では集落の1.9%、2030年では6.4%ほどになります。
京都府という限られた地域の調査とはいえ、意外に少ないような感じも受けます。しかしこれが2040年、2050年になればもっと増えていくでしょう。当然、付随する農地もそれだけ減っていくわけです。
この流れは、これまでの地域活性化策では止められそうにありません。
限界集落を多く抱える過疎地は、大型機械を入れた大規模農業にはそもそも不適です。高知県の馬路村でのゆずを中核に置いた飲料水などの製造販売や、徳島の上勝町の“葉っぱ”ビジネスのような、いわゆる6次産業化に成功している地域もないわけではありませんが、同じことを他の地域に要求しても難しいものがあります。
そのため、上記の共同研究会「撤退の農村計画」はその名の通り、残す集落とそうでない集落を選別して山間部の集落を大胆に減らすことを提案しています。これは傾聴に値する意見だと思います。