イラストレーターになって雑誌に挿絵を描いたり、自分の絵が大きなポスターになったりしたらいいなぁ。そう憧れる人が日本にはたくさんいるようだ。
でも、イラストがうまく描けるだけではプロにはなれない。依頼主の要望にそうように、なおかつ自分自身の個性も出した商業向きのイラストを作り続けていける人は、そう多くはない。
イラストの需要は日本だけでなく海外でもあるが、そんな夢を海外でかなえた女性がパリ近郊に住んでいる。後藤美和は「絶対にイラストレーターになりたい」という思いを持ち続けて東京で経験を積み、パリにやって来た。
フランスで好まれるイラストは日本やアメリカとは同じではないが、後藤はパリで生活するうちにヨーロッパ人たちの心をつかむ作風をつかみ、いまではたくさんの企業から仕事を依頼される売れっ子になった。
後藤がどんなふうにチャンスをつかんできたのか、彼女のサクセスストーリーを素敵なイラストとともに紹介しよう。(文中敬称略)
お菓子の包装から美術館グッズまで「後藤ワールド」が花開く
まずは本記事、そして後藤のサイトにあるイラストをご覧いただきたい。色合いの絶妙さ、エレガントさ、軽快さ、そして力強さまでもが漂うイラストは、一目見ただけで楽しくなってこないだろうか。そしてパッと見ただけで、目に焼き付くくらいの印象を与える。
後藤のイラストはパリの街によく似合う。パリの有名店 Arnaud Delmontel がマカロンのパッケージに後藤の絵を採用したり、出版社が後藤の絵を使ってパリの絵葉書を発売したり、「後藤ワールド」はすべて、そこにあるのが当然のようにどっしりと居場所を構えている。
「日本ではイラストというと全般的にカワイイものが好まれます。でもフランスは成熟した美とカワイイものとがはっきりと区別されて、イラストにも味わいのある大人の美が求められます」
後藤がこの仕事を目指したのは、イラストは見る人に夢を与えることができるから。日本でたくさんの夢を人々に与えてきた後藤は、自分も夢を見るかのように不思議な縁に恵まれながらパリにたどり着き、この地で新しい夢を次々に届けている。