2013年の大晦日に、ロシアのヴラジーミル・プーチン大統領はハバロフスクにいた。昨年、東シベリア・極東を襲った大水害の被害者たちへの慰問が目的である。

 そして彼は、その翌日の元旦にはすでにロシア南部のヴォルゴグラードにいた。言うまでもなく、年末に発生した連続自爆テロ事件への姿勢を示すためだった。事件に巻き込まれた負傷者を病院に見舞い、治安関係者を集めてのテロ対策会議も行った。

世界で最も激しく飛び回る大統領

プーチン大統領がソチ訪問、スキーやアイスホッケーの腕前披露

オリンピック開幕まであと1カ月に迫ったソチを訪問したウラジーミル・プーチン大統領〔AFPBB News

 年末年始が日本ほど安息と弛緩でもないお国柄とはいえ、よく働きよく動くものだ。我らが宰相も就任以来、10を超える国々を駆け巡っておられるが、国の内外を合わせ飛び回っている頻度では、失礼ながらプーチンには及ぶまい。ロシア国内といっても、上述のハバロフスクなどはモスクワと時差が7時間もある距離なのだ。

 政策や思想はともかく、プーチンがその働きぶりで「しっかりした指導者」と評価されるなら、それを間違いだと反駁するのは難しい。

 昨年の12月だけを取ってみても、議会関係者ほかへの年次教書報告に始まり、ウクライナ問題での決断とそれによるEUの東進撃退、1年間を総括する形での4時間余に及ぶ定例記者会見、そして、その記者会見直後に明らかにされたミハイル・ホドルコフスキーの釈放というサプライズ、と続く。

 彼とて1日は24時間しかないはずなのに、短期間でよくこれだけの難題を詰め込んで、かつしかるべき成果を出せるものだ、と感心させられる1カ月だった。

 だが、しっかりしているからこそ、プーチンは他国から警戒心や恐怖感をもって見られてしまうことにもなる。有能な国家のリーダーとは、他国にとっては常に潜在脅威なのだ。特に2013年は、シリア問題でプーチンに一本取られ、そのうえエドワード・スノーデン問題が起こったことで、米国の腸は煮えくり返っている。

 EUとてしかり。10月から12月にかけて繰り広げられたウクライナを巡る綱引きで、完敗に近い形の結末となったのだから、その屈辱と恨みたるや、想像を絶するものかもしれない。

 そうなれば、西側のメディアに登場するプーチンへの評判は、強権政治、非民主主義、ソ連帝国の復活への野望、国内での支持率低下、といった具合に、お世辞にも良いものとは言えなくなる。

 それでも2013年でのプーチンの働きは、好き嫌いを棚上げしてでも西側は認めざるを得ない。昨年10月に米経済誌フォーブスは“The World Most Powerful People 2013”のトップに、バラク・オバマ大統領を差し置いてプーチンを据えた。そして年末には、英紙ザ・タイムズが彼を“The Times International Person of the Year”に選んでいる。