秋になると新しい中国統計年鑑が発売される。統計年鑑は中国の国家統計局が公表するデータの集大成であり、電話帳のように厚い。

 広く知られているように中国が公表するデータの信頼性は低い。しかし、それでも中国を語るには欠かせない一冊となっている。それは、いくら信頼性に欠けるとはいっても多くの分野にわたりデータが掲載されているために、経年変化や項目間の関連を解析すれば、中国での起こっていることをある程度推定することができるからだ。

不動産投資は活発だが住宅は過剰供給の状態

 中国の不動産関連の不良債権額を、統計年鑑に記載された数字から推定してみたい。

 中国の不動産に関連する投資額は13兆元(2012年)である。その内訳は不動産業に9兆9000億元、交通網の整備が3兆1000億元となっている。前年からの伸び率は不動産業が21.3%、交通網整備が11.3%である。

 2012年は中国経済の減速が伝えられ始めた年であるが、統計をそのまま信じれば、年率20%を超えた活発な不動産投資が行われていたことになる。

 中国では土地開発や交通網の整備は、地方政府やその周辺に作られた公社が一手に行っている。その資金の出所は強制的に収容した農地の売却益である。このことについては、既に本コラム(「中国の土地バブル崩壊はもうすぐ」、2011年1月19日)に述べたので参照していただきたい。

 中国では農村から都市へ人口移動が続いている。これは経済発展の過程で必ず生じる現象である。都市へ流入する人々は単身であることが多い。最初はアパートや会社が用意した寮などに住むことになるが、それでも時が経過すれば自分の家が欲しいと思うようになる。

 統計年鑑によると都市人口は、1995年から2012年の間に3億5000万人から7億1000万人になった。3億6000万人の増加である。中国の平均的な世帯人数は約3人だから、この17年間に都市部で約1億2000万戸の住宅需要が発生したことになる。

 中国の都市部の住居は日本で言うマンションである。一戸建てはほとんどない。その平均的な広さは100平方メートル程度であり、国が大きいためか日本より広い。