「昔、昔、ドイツという国で総選挙が行われました。CDU(キリスト教民主同盟)とCSU(キリスト社会同盟)の保守連合は大勝しましたが、しかし、過半数には至らなかったため、連立交渉が始まりました。それ以来、幾度、日が暮れ、夜が明けたことでしょう。緑の木々は色づき、やがてすっかり葉が落ちて、いつしか雪が降り始めました」
総選挙後2カ月以上も組閣できず、政治がマヒ状態だったドイツ
昔、昔というのはちょっと大げさで、総選挙のあったのは9月22日だ。とはいえ、もうすでに2カ月が過ぎたので、日本人は皆、ドイツに新内閣ができていないことなど、もうすっかり忘れているに違いない。いつまでに組閣をしなければいけないという決まりはないそうだ。
議会には、とっくに新議員が座っている。新しい政権が決まるまでは、前政権が業務を行う。しかし、この状態では政策もなければ、法案も通せない。ドイツの政治は2カ月以上もマヒ状態が続いている。
とくに、FPD(自民党)は今回の選挙で全議席を失ったため、次政権で消えゆく運命だが、前政権の与党として一翼を担っていたため、いまだに外務大臣や経済技術大臣、法務大臣の座をFPDの議員が占めている。それだけでも滑稽だが、特に、国際会議などではドイツの信用にもかかわる。
選挙後から現在までの経過を見てみよう。
まず、選挙で圧勝したのは、前述のとおり、CDUとCSUであった。CSUというのはバイエルン州の保守政党で、同州だけで活動している政党だ。ドイツ全体から見れば小さな政党だが、バイエルン州では圧倒的に強く、州議会では過半数を握っている。
一方、CDUはバイエルン州だけにはなく、つまり、CDUとCSUはセットになり、全国を網羅している。前政権は、この両党にFDPが加わって、保守中道の3党で連立政権を形成していた。
ところが前述のように、FDPが惨敗して、議会から六十余年ぶりに消えてしまう。前回の選挙では、FDPが14%もの得票数を持っていたため、それを失ったCDU+CSUは、圧勝とはいえども過半数を切った。
そこで、連立の可能性を探らなければいけなくなったのだが、残っているのはすべて保守とは一線を画す政党ばかり。そのために、ことがとりわけ面倒になった。