ヒット商品やロングセラー商品の開発担当者に「ぜひともここを見て!」というこだわりのポイントを披露してもらうココミテ選手権。今回登場するのは、富士フイルムが2013年11月9日に発売したレンズ交換式プレミアムカメラ「FUJIFILM X-E2」の商品企画を担当した大石誠氏だ。
1934年に写真フィルムの国産化を使命に創業し、写真フィルム市場のリーディングカンパニーとなった富士フイルムだが、1983年に世界初のデジタルX線画像診断システム「FCR」を発表するなど、デジタル化の波の到来を予想し、いちはやく対応を進めてきた。98年に発売した「FinePix700」は、10万円を切る1.5メガピクセル機として支持され、フィルムがなくても写真を撮影できる家庭用コンパクトデジタルカメラの市場を牽引してきた。
ただ、2010年代以降、スマートフォンの普及が急速に進んだことで、カメラ市場は大きな影響を受けた。スマートフォンは、専用のカメラには敵わないまでも、そこそこの機能を備えているため、コンパクトカメラの市場を圧迫したのだ。
富士フイルムの「Xシリーズ」は、そうした動きに先んじて投入された高級コンパクトカメラだ。中でも最高級クラスの技術を結集した高機能を搭載しながら、小型・軽量化を実現した「FUJIFILM X-E1」は、2012年11月に発売され、「いい写真をコンパクトなシステムで撮りたい」と願う多くのカメラファンに支持された。大石氏のミッションは、その支持をさらに広げる2代目機種をつくること。
小型で軽量のコンパクトシステムカメラに高機能を搭載するというのは、容易なことではない。大石氏は、どのようにしてその難しいミッションを達成したのだろうか。
2代目は、1代目を超える
製品でないと意味がない
──高級コンパクトカメラという新しい市場が生まれた背景には、どのような要素があるのですか?
大石誠氏(以下、敬称略) 富士フイルムが最初に発売した高級コンパクトカメラは、2011年3月に発売した「FUJIFILM X100」ですが、発売前は「コンパクトカメラを高画質・高機能にして売れるのか?」という声が社内からもありました。ところが、1年で10万台という売上目標を9カ月、つまり3カ月前倒しで達成するほどの好評を得たんです。それは、スマートフォンのカメラや、従来のコンパクトカメラより高性能のカメラが求められていることが証明された瞬間でした。