7月2日に米労働省が発表した6月の雇用統計で、非農業部門雇用者数(前月差、以下同じ)は▲12万5000人となり、6カ月ぶりにマイナスに沈んだ。国勢調査に関連する連邦政府の一時雇用が▲22万5000人となり、過去のパターン通り、6月から減少し始めたことが主因である。民間部門の雇用者数は+8万3000人にとどまり、政府部門の落ち込みをカバーできなかった。結果として、筆者が予想していたほどではなかったものの、非農業部門雇用者数のマイナス幅は市場予想中心よりも大きな数字になった。前回5月分に続いて、米国の雇用市場の回復力の弱さ、特に民間部門による雇用創出力の弱さが示された結果だと言えるだろう。住宅とクレジットの巨大なバブルが崩壊した後の米国経済は、例えて言えば、まだ「入院中」の状態である。家計や金融機関のバランスシート調整、住宅セクターの調整などが継続しており、めでたく「退院」できるのはまだかなり先だろう。米連邦準備理事会(FRB)が利上げに動くことができるのは早くて2012年1-3月期ではないかと、筆者は予想している。
非農業部門雇用者数の業種別の内訳を見ると、財生産部門では、建設業の雇用が▲2万2000人となり、2カ月連続で減少したことが目立つ。6月は非居住用関連を中心に減少した。製造業では、6カ月連続で増加したものの、6月は+9000人にとどまり、勢いは落ちている。
民間サービス部門では、雇用の先行指標として注目する向きがある人材派遣で、増加が続いている。しかし今回は+2万1000人であり、これまでよりもプラス幅は小さめだった。小売業は▲7000人となり、2カ月連続で減った。米国の消費関連指標の数字が最近弱いことと整合する。金融業も2カ月連続の減少である。
一方、失業率は9.5%になり、前月の9.7%から0.2%ポイント低下した。低下は2カ月連続で、予想外の動きである。しかし、あきらめ的な労働市場からの退出が失業率低下の主因であり、前向きな動きではない。非労働力人口が増加を続けている。6月の労働参加率は64.7%で、前月から0.3%ポイント低下した。