四半世紀続いたタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)と政府軍との内戦の地、スリランカ北部州で、9月21日、州議会選が行われ、タミル国民連合(TNA)が圧勝、タミル人主導の州政府が初めて誕生した。

 2009年、LTTEの指導者ヴェルピライ・ブラバカランが殺害され、7万人とも10万人とも言われる犠牲者を出した内戦はようやく終結していた。

英米で活躍する女性ラッパーM.I.A.の故郷

スリランカには仏教の名所が数多くある

 インド南方に浮かぶ島国スリランカでは、人口の4分の3を占めるシンハラ人と、北部州では大半を占めながら全人口では6分の1にすぎないタミル人との対立が続いてきた。

 タミル人の多くがヒンドゥー教徒でシンハラ人は仏教徒という宗教による壁に加え、その言語の違いは大きく、シンハラ人が多い警察官や軍人と言葉が通じない、とのタミル人住民の苦情も多いと聞く。

 そんなスリランカ・タミルとして知られるのが、英米で活躍する女性ラッパーM.I.A.。幼少期を北部州都ジャフナで過ごし、LTTEのメンバーの父親が内戦中行方不明になったことから、「Missing in action(戦時行方不明)」の略を名乗っているのだという。

 その彼女のヒット曲「Paper plane」は、アカデミー賞を総なめにした大ヒット映画『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)の挿入歌。

 ヒンドゥー教徒から迫害を受ける貧しいイスラム教徒の青年が、日本ではみのもんたの司会で人気のクイズ番組同様の「クイズ$ミリオネア」で一攫千金の夢へと向かう物語は、ヒンディー語映画の都ムンバイ(旧都市名ボンベイをもじって「ボリウッド」と呼ばれる)などが舞台。

 ヒンディー語が3分の1を占める英国人監督ダニー・ボイルの手による「マサラムービー」である。

 音楽を担当しているのは、いまや世界的売れっ子のインド人作曲家A・R・ラフマーン。日本でその名が聞かれるようになったのは、1998年、興収2億円と、インド映画としては異例の大ヒットを記録した『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995)あたりから。

 上映時間も3時間程度と長く、歌い踊るシーン満載に何でもござれの娯楽映画であるインド「マサラムービー」ブームの火付け役となった作品だが、当時『タイタニック』(1997)のケルトサウンドとともにもてはやされたエスニックサウンドはタミル語で歌われていた。