日中の神経戦が続く沖縄県尖閣諸島海域の上空で、中国が無人機での領空接近を試みた。

 国有化から1周年となる9月11日を間近に控えた9月9日、日本の防空識別圏に進入してきた国籍不明機に那覇基地から航空自衛隊の戦闘機がスクランブル出動したところ、確認されたのは遠隔操作の無人機だった。後日、中国国防部が、その無人機が軍に属するということを確認した。

 日本の防衛省は、中国の無人機が確認されたのは今回が初めてとしているが、中国は以前から尖閣諸島上空に無人機を飛ばし、写真撮影等の情報収集をしていたと言われていた。今回、それが確認されたことになる。

 中国が尖閣上空に無人機を飛ばした狙いはどこにあるのか、またその戦略的インプリケーションは何かを探ってみることにする。

無人機の導入が遅れている自衛隊

 意外と知られていないが、中国は無人機(UAVまたはDrone)開発において1950年代以来の長い歴史を持つ。しかし、戦術的、戦略的に現在これをどう運用しようとしているのかについての情報は乏しい。

 開発の長い歴史にもかかわらず、例えば2009年の建国60周年を祝う軍事パレードに出てきた無人機は、大型のラジコン飛行機の域を出るものではなかった。しかし、軍事戦略において「情報化条件下の局地戦争を戦って勝利する」という目標を掲げたのは胡錦濤時代であり、軍事パレードで旧式な無人機を展示する一方で、米国の墜落した無人機を入手するなど、西側とりわけ米国の先進的な無人機をモデルに熱心な開発が進められてきた。

 翻ってわが国はどうかと言えば、無人機の開発は確かにやってきた。しかし、2011年3月11日の東日本大震災で情報収集に大活躍したのは米軍の無人偵察機「グローバルホーク」であり、2007年から陸上自衛隊に装備されていた「FFRS」と呼ばれる無人ヘリが投入されることはなかった。端的に言えば、投入できるだけの信頼性すら確立していないオモチャに過ぎなかったわけだ。

 しかもこのFFRSは作戦行動半径が小さく、尖閣諸島の上空に長時間滞空し情報収集に当たるといったミッションはこなせない。遠隔地の島嶼防衛という事態がまったく想定されていなかったことが分かる。

 2013年7月26日、防衛省が公表した「防衛力の在り方検討に関する中間報告」で、「警戒監視能力の強化」の部分において「我が国領海・領空から比較的離れた地域での情報収集や事態が緊迫した際の空中での常時継続的な警戒監視等の点において、現有の装備品の能力が十分ではないことから、搭乗員に対する危険や負担を局限しつつ、広域における常時継続的な警戒監視態勢の強化に資する高高度滞空型無人機の導入等についても検討する」ことが謳われた。