ヨーロッパはかつて、地球上の8割の土地を支配する植民地帝国をつくり上げた。しかし20世紀初頭、「世界の工場」の地位を米国に奪われ、さらに1970年代からは、日本や韓国、台湾、中国など非西洋世界にその地位を奪われていった。

社会構造、都市構造から日本の今後を考える

 しかし今、ヨーロッパを見ると、ベネルクスやスイス、北欧3国、ドイツなどは日本よりも所得が高い。

 日本が目指す国の姿――例えば食料自給率、エネルギー自給率や所得水準が高く、過密過疎の問題もなく、国民の満足度・幸せ感が高い、サステナブルな国家――に、上記の国々が該当するが、なぜ彼らには実現できたのだろうか。

 その根本の原因は、社会構造や都市構造の特性といったところにもある。ドイツなどヨーロッパとの比較を例としながら、日本の社会の発展について考えたい。

秩序・パーフェクト・コンプリート――人間社会の3形態

 いわゆる近代国家、先進国の多くはこれまでに3つの社会の形態を経ている。あとで詳しく説明するが、まずその3つの社会を紹介し、それをベースに考えてみよう。

(1)封建型農耕社会:「秩序」を理想概念とする閉じられた分散の社会。
(2)工業化社会:「パーフェクト」を理想概念とするピラミッド型社会。
(3)多次元ネットワーク社会:「コンプリート」を理想概念とする、複数の核が有機的に結び付いた社会。

 補足すると、工業化社会の「パーフェクト」とは、1つのものの全体について、それが完全なあり方としてあることを指す。例えば、巨大組織がよく利益を出す、GDP(国内総生産)が大きい、といったことだ。多くのものの中で、それが一番優れているという順位づけ可能な概念を指す。

 一方、多次元ネットワーク社会の「コンプリート」とは経済学用語でもあるが、多くのものがそれぞれ対応し、最適に機能しているという状態を指す語だ。必ずしもbestとかlargestを意味しない。一人ひとりが役割を持ち、完結した関係性を持った状態だ。

 国によって発展の仕方は異なるが、この社会構造の考え方を踏まえ、歴史を追って具体的な流れを見てみたい。