中国の人民解放軍が最新鋭の戦略原子力潜水艦を完成させ、2014年から実戦配備を始めるという展望が、米軍研究機関から明らかにされた。

 中国の近海からでも米国本土に核弾頭装備の弾道ミサイルを撃ちこめる能力を持つというこの潜水艦の配備は、西太平洋での米中戦力のバランスを変えて、日本と中国との尖閣諸島を巡る対立の構図をも大きく変容させかねないという。

36発の核弾頭を積載する多弾頭ミサイルシステム

 この展望は、米空軍国家航空宇宙情報センターがこのほど作成した報告により明示された。

 同報告によると、中国海軍はこれまですでに遠距離に届く戦略核ミサイルを搭載した094型晋級潜水艦を完成させていたが、そのうち1隻は2014年から定期的な実戦配備のための航行に就くことが確実となったという。

 晋級は中国海軍保有の潜水艦の中でも最も性能の良い原子力艦で、射程距離8000~1万4000キロの潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)12基を装備している。中国海軍ではすでに晋級3隻を完成させたが、これまでは港の停泊中の状況や、あるいは中国本土にごく近い沿岸での活動しか公開してこなかった。

 しかしいまの時点では、技術的な進歩や潜水艦操縦方法の練達によって晋級のうちの1隻は中国本土を離れ、南シナ海、東シナ海、西太平洋の広大な海域でまもなく定期的な活動をすることが可能になったという。

 米軍側の情報によると、晋級潜水艦は将来、新開発の多弾頭ミサイルシステムを装備することを目指している。そのシステムでは各ミサイルが3発の核弾頭を積載し、それぞれの核弾頭は個別に特定の目標に向かうことが可能になるという。

 この多弾頭ミサイルシステムがもし実現すると、晋級潜水艦1隻から最大36カ所を目標に核弾頭を発射できることになる。米国としては本土に大規模な核攻撃を受ける危険が生まれることになる。