ニッケイ新聞 2013年8月8日
世界の日本語学習者数は右肩上がりに伸びているが、ブラジル国内では減っている傾向にあるようだ。
国際交流基金の本部が3年おきに実施する「海外日本語教育機関調査」2012年度版(速報値)によれば、世界の日本語学習者数(136カ国・地域を対象)は、過去3年間で9.1%も増え約398万人になった。特に中国、インドネシアをはじめとするアジア圏での増加が顕著だ。
その一方でブラジルは約10年ぶりに2万人を切り、世界順位を2つ落として15位になった。激減したわけではないが、他国の勢いに引き離されつつある。ただし、日本語を教える公的機関は増え、学習動機も「アニメ・マンガ」などの項目が上位を占め、非日系学習者数が伸びていることが顕著になった。
世界の日本語教育を行う機関数は1120件増で1万6045、教師数も約1万4000人増えて6万3771人と上昇中だ。
日本本部が調査結果を分析中だが、同基金サンパウロ日本文化センターの松尾博貴副所長は個人的見解と前置きしつつ、「世界各地で高まっている日本文化への人気を反映しているのでは。特にアジアは文化・経済的に結びつきが強いし、人口も多い」と語った。
ブラジルは今も南米1位だが、いずれの項目も微減した。2009年の学習者数は2万1376人だったが今回は1万9913人。機関数も22件減で325件、教師数は35人減で1132人となった。中でも機関数は、2006年から2009年にかけて36%も減った。
機関数の減少は、日本人会など民間学校の閉校によるものが大きい。昨年、梶原新吾所長(当時)に尋ねた所、「一つ一つの学校が大規模化して、閉校した中小零細校の生徒を吸収しているのでは」と推察していた。小規模の日本語学校が世代交代に失敗し、やむなく閉校に至ったケースも多いとみられた。
時代にあった事業必要
こうした機関数減少に歯止めをかけたのが公的教育機関だ。今年の内訳はまだ発表されていないが、2009年までの10年間で初等・中等教育は17から66、高等教育は8から14と倍増した。「日本語教育が徐々に公立校にシフトしてきたのかもしれない」(梶原前所長)。
学習目的も09年度は「母語・継承語」「家族等の勧め」がトップだったが、今回は非日系に多いと思われる「アニメ・マンガ」「言語そのものへの興味」「日本語でコミュニケーション」の3つが上位3位に躍り出た。
日系社会で「学習者の減少」が叫ばれる割に、学習者全体では微減程度なのは、日系人の減少分を非日系の増加が補っているからのようだ。ブラジル日本語センターの丹羽義和事務局長も「日系人学習者は減っているが、非日系は増えている」との印象を抱いている。
現場の問題は「教師数不足」「教材不足」「教材・教授法の情報不足」であり、これを解消して教師の待遇を改善し、経営を安定させることが不可欠という。
同センターでは州や市に働きかけ公立校への導入を進めるなどの対抗策を練っている。丹羽事務局長は「生徒数が増えている日系の学校もあるので、やり方次第。時代にあった事業が必要だ」と話した。
(ニッケイ新聞・本紙記事の無断転載を禁じます。JBpressではニッケイ新聞の許可を得て転載しています)