週刊NY生活 2013年7月21日451号

 「花はどこへ行った」や「ウィ・シャル・オーバーカム」など、1960年代の公民権運動を象徴する作品を生み出した米国フォーク界の巨匠ピート・シーガーさんの妻、トシ・アーリン・オオタ・シーガーさんが9日、ニューヨーク州ビーコンの自宅で死去した。91歳だった。

 トシさんは、米国人の母と日本人の父の間にドイツで生まれ、生後6か月でニューヨークに移住した。反ファシズム運動家の父の元で育ち、高校はハイスクール・オブ・ミュージック&アートに進学した。

 ピートさんとは、フォーク愛好家が集まるスクエア・ダンス・クラブで知り合い、1943年7月に結婚した。49年ビーコンに手作りのキャビンハウスを建て、当初は水道、電気なしの暮らしを送っていた。

 戦地から戻ったピートさんの音楽活動を支えながら、映画、テレビ番組制作者としても活躍し、2007年のドキュメンタリー番組「ピート・シーガー:ザ・パワー・オブ・ソング」はエミー賞を受賞した。

 1959年にスタートしたニューポート・フォーク・フェスティバルには理事として運営にも携わり、「出演者は50ドル以上のギャラを受け取るべきではない」など、急進的な提言をしたことも言い伝えられている。

 クリアウォーター・アライアンスのリーダーとして、ハドソン川の徹底的な清掃運動も率いた。実生活では、現在94歳のピートさんと、3人の子供、6人の孫、1人のひ孫に恵まれた。

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