今回は「真夏の夜の夢」と題して、私の自動車の未来に関する展望を述べてみたい。自動車は、今後自然エネルギーを活用するための北海道から東北、東北から全国への送電網の普及に貢献し、自らの在り方をも変えていくだろう。しばしお付き合いいただきたい。
自然エネルギー生産地と、電力消費地をつなぐ送電網の必要性
まず日本の自然エネルギーの現状から話そう。
自然エネルギーは過疎地産業である。自然エネルギーを活用するためは、太陽光、太陽熱、バイオマス、風力、地熱といった太陽エネルギー由来の自然エネルギー資源に恵まれるとともに広大な土地が必要となる。日本では、北海道・東北・九州などに適地が多い。
しかしその電力を送るための送電網は、戦後、臨海部の大都市を中心に、その周辺部に発達してきた。戦後の日本は、大都市に石油などの化石燃料や食糧を陸揚げして、周りに住む人が電気や食糧の供給を受ける仕組みで、3%の土地に8200万人の人口が集中するという極端な過密と過疎の構造になっていた。
ちなみに明治22年、日本で初めて国勢調査が行われた際、最も人口が多かったのは新潟県だった。米を作る場所に人が住んでいた当時とは、大きな違いがある。
そもそも人が住んでいないところで作られる自然エネルギーのポテンシャルを十分に解き放つためには、過疎地から過密の大都市まで電気を送る必要がある。
現在、北海道では送電網の容量が不足しているが、やはりこれから強化が必要だ。自然エネルギーを地域から都市へ輸送する送電網は、高速道路、鉄道、飛行機につぐ第4のインフラとなるに違いない。
ここで提案がある。今後フィージビリティスタディが必要だが、例えば、高速道路に直流あるいは高温超電導ケーブルによる送電網を埋め込むのはどうか。これはいろいろな意味で鍵になると思う。
EV普及と共に電力ネットワークを拡げる
自然エネルギー発電の場所と電力消費地を結ぶためには、実は高速道路や鉄道ネットワークを使い、協力していくのが実現に近いのではないかと思う。高速道路や鉄道に埋め込んだケーブルを通る電気は、電車を動かすためにも使えるし、今普及が期待されているEV(電気自動車)の給電にも使える。
特に、高速道路に送電網を付けることで、自動車社会が変わる大きな可能性があると思う。自動車は日本の最大の産業であり、その自動車社会が変われば日本は新たな次元で世界のトップランナーになれるだろう。
例えばEVでは、最初の段階では充電ステーションを定期的に作ることから始め、その先は走行中の車に充電をする非接触充電という形にしてはどうか。現在、このような技術は京都大学や東京工業大学などの研究機関、日本の自動車メーカー各社によって、実用化に向けて研究されている。