アメリカ連邦議会上院は、7月29日、メネンデス上院外交委員長を中心とする超党派の議員たちが6月に提出していた「上院第167号決議」を採択した。内容は「アジア太平洋海域における領土・主権・施政権に関する紛争の平和的解決をアメリカ合衆国が強く支持することの再確認」である。

 この決議により、アメリカ上院は、オバマ大統領が強調する「アジアシフト」というアメリカ国防戦略を後押しする姿勢を示した。

 しかし、オバマ大統領の方針にせよそれを支持する上院の決議にせよ、現実に「アジアシフト」国防戦略を実施するために必要十分な軍事力がなければ単なるかけ声に終わってしまう。そして、強制財政削減が始まっているアメリカでは、国防予算の“想像を絶する”ほどの大幅削減に直面しているのである。

上院決議が問題視する中国の行動

 上院第167号決議は、南シナ海と東シナ海で自国の主権を軍事的威嚇まで使用して一方的に主張している中国の行動を以下のようにかなり細かく具体的に指摘して、中国共産党政府に自制を求める内容となっている。

・2011年5月、南シナ海で中国船はベトナムの地震調査ケーブルを切断した。

・2012年4月、南シナ海スカボロー礁に中国船はバリケードを築いた。

・中国は、“九段線”と称する国境線を勝手に南シナ海に設定した公式地図を刊行している。

・2013年5月以降、中国海軍艦艇と海洋調査船はフィリピン近海のセコンドトーマス礁周辺海域に恒常的に出現している。

・2013年1月、東シナ海で中国海軍軍艦は日本船に対してロックオンをした。

・2013年4月23日、8隻の中国海洋調査船が尖閣諸島12海里領海内に侵入した。

・2013年5月8日、中国共産党機関紙に、数名の中国人学者による沖縄が日本の領土であることに対して疑義を呈する論文が掲載された。