東日本大震災の原発事故、そしてその後の全国的な原発の稼働停止で、節電は社会的なテーマになった。
震災直後に計画停電が実行され、2011年の3月から4月には東京電力は大々的な節電を国民に求めた。また、同年の夏には経済産業省が、平日9時~20時における使用最大電力を15%削減するように呼びかけた。
あれから2年が経過した今年、企業の節電状況はどのように変化しているのだろうか。今回は省エネルギーに詳しい、早稲田大学の高口洋人教授に話を聞いた。
“気合の節電”は長続きしない
「2011年の夏は前年に比べて使用電力が20%以上減りました。同年秋に取ったアンケートでも、震災後の節電が国民運動的に行われたのがよく分かります。震災の直接的な影響を受けておらず、比較的関心が薄いとされた関西でも、8月の前年比の削減率は関東と変わらない状況でした。しかし、2012年の使用電力は2011年ほどは減っていないようです。節電に対する熱は冷めてきています。おそらく今年も前年より使用量は増えるのではないでしょうか」
なぜ2011年には使用電力が前年比20%の削減が達成できたのに、それを維持することができなかったのだろう。
「それはいわば、“気合の節電”だったからです。2011年は緊急避難的に国民が無理をして節電に協力していた。最近は関心が薄れてきているのです」(高口教授、以下同)
震災直後は国の一大事ということで、節電への関心が高かった。もちろん、マスコミが節電を取り上げる機会も多かった。
しかし、ダイエットが気合や無理をしてでは長続きしないように、節電も無理をしては長期的な継続が難しい。ダイエットに例えるなら今年は、無理をした節電がリバウンド期に入っているということだろう。
電力料金値上げ――費用対効果の上がる対策とは
では、これから企業はどのような節電対策を取っていくべきなのだろうか。高口教授は気合で動くのではなく、まずは節電に対する正確な理解が必要だと考える。
「節電にはピークを抑制する節電と、電力消費量全体を減らす節電があります。私はこれを区別するために、前者を『節電』、後者を『省電力』と呼んでいます。震災後の夏にまず求められたのは節電の方です。省電力も国富流出の抑制やCO2削減の観点からは意味がありましたが、緊急対策という類のものではありませんでした」