FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が6月19日に「出口戦略」に言及したことで、アメリカの金利やドルが上がり始め、約1カ月ぶりに1ドル=100円を回復した。出口戦略とは、今までFRBが拡大してきた量的緩和を縮小するということだ。

 といってもすぐ資産を売却するわけではなく、今年の秋あたりから徐々に資産買い入れのペースを落とし始めると見られている。それだけのことが世界経済を動かすほど、出口戦略というのは難しい。金融緩和は誰でも歓迎するが、それをやめることは政治家がいやがるからだ。

金融を引き締めた「異次元緩和」

 他方、日本銀行の供給するマネタリーベース(現金・日銀当座預金)の6月末残高は、173兆円と過去最高になった。5月末には159兆円だったので、1カ月に14兆円も増えたことになる。

 これは日銀の黒田東彦総裁が当初言っていた「毎月5兆円」というペースをはるかに超えるペースで、このままではマネタリーベースは「2年で2倍」どころか、1年で2倍になってしまう。

 それによる緩和効果は出ているのだろうか。日銀がこれだけ大量に国債を買っているにもかかわらず、長期金利(10年物国債)は0.9%に乗せた。これは日銀が買う以上に民間が売っていると考えるしかない。

 「異次元緩和」は、金利を引き上げて金融引き締めになっているのだ。では黒田氏の目標とする物価はどうなっているだろうか?

消費者物価指数(全国・%)、出所:総務省

 黒田氏は「2年で2%の物価上昇」という目標を掲げたが、図のように消費者物価指数(CPI)は5月も-0.3%のデフレだった。生鮮食品を除く「コアCPI」はゼロだが、これは電気代の値上げ(8.8%)があったためで、エネルギー価格を除くCPIでは、やはり-0.4%のデフレである。