昨今、アベノミクスの記事が報道紙面をにぎわす一方で、日本を代表する大手電機メーカー各社が、相次いで大規模な早期退職者の募集を進めている。さらに、厳しい国際競争の現場で勝ち組と言われる企業までが、若手の登用や人事の刷新などを掲げて早期退職制度を常態化させている。

 グローバル時代を生き抜くために企業側がドライに徹していると言える。一方で、雇用される側の個人は、雇用だけを頼みとするサラリーパーソンであることが高リスクの職業に変化したことを自覚できずにいる。

シャープ、鴻海からの出資が白紙に

シャープやパナソニックなど電機大手の人員削減計画が相次いだ〔AFPBB News

 私自身、56歳で会社を早期退職し、2005年以来8年にわたり大手再就職支援企業で独立起業を目指す人々の支援に携わってきた。

 これまで延べ1万2000人あまりを対象に、「独立起業支援セミナー」を開講するとともに、毎年、個別に30社を超える独立起業の支援を継続している。その経験を踏まえて、こうしたサラリーパーソンが早期退職した後の独立起業の実態を、3回に分けて報告する。

 まずは、私がこの目で見てきた独立起業のトレンドを振り返ってみたい。

バブル崩壊から終身雇用制度の終焉へ

 日本型経営の基礎にあったと言える終身雇用制度は、バブル崩壊(1992年)の後、数年を経て雇用を支え切れず崩壊した。

 誘因として1995年に日本経営者団体連盟(現・日本経済団体連合会)が提言した「新時代の『日本的経営』」がある。その中で今後の企業・従業員の雇用に関する考え方を、3つのグループに分けて運用することを提言していた。

 1つ目は長期雇用するグループ。長期的に蓄積した能力を活用する人材で、管理職、総合職、技能部門の基幹職を対象とする。2つ目の中期的雇用は高度な専門能力を活用する人材で、企画、営業、研究開発などの専門家を対象とする。

 3つ目の短期的雇用は、雇用柔軟型人材であるホワイトカラーの一般職、流通・サービス業の営業職などを対象とする。これら3つのグループに分けて労働力の運用を図ることを提言するものであった。

 一方、規制緩和政策のもとで労働者派遣法の改正が1997年と2004年に行われ、一気に非正規雇用者の採用が緩和されたことも正規雇用者の調整を可能にした。