サウジ記者不明、米国に「責任の一端」 プーチン氏

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(2018年10月18日撮影)。(c)Alexei Druzhinin / SPUTNIK / AFP〔AFPBB News

 2013年4月29日にモスクワで行われた日露首脳会談で、停滞していた平和条約交渉を加速化すると明言した共同声明が発表された。これを受けて報道各社は、北方領土返還の道が大きく進んだという印象の記事を掲載しているが、果たしてそうなのか?

 今回の共同声明は、対話の強化や、安全保障分野の協力拡大、エネルギーや投資環境など経済的協力の拡大などなど、双方に利益となる合意がなされ、それ自体は筆者も高く評価したいと考えている。しかし、領土問題に対しては、実質的な「言質」は盛り込まれていない。

何度も繰り返されてきた“期待外れの肩透かし”

 該当の部分はこうだ。

 「第2次世界大戦後67年を経て日露平和条約が締結されていない状態は異常であるとの認識で一致。両首脳の議論に付すため、平和条約問題の双方に受け入れ可能な解決策を作成する交渉を加速化させるとの指示を、自国の外務省に共同で与える」(要旨)

 要するに「交渉しましょう」と決まっただけで、「返還しましょう」とは一言もない。交渉内容も「双方に受け入れ可能な解決策」を考えようということで、それ以上でもそれ以下でもない。返還という展望があるのなら、せめて領土の帰属問題に言及してもよさそうだが、それもない。書いてないのは理由があるからで、これまで通り双方の主張が平行線をたどることは明らかだ。

 「交渉しよう」ということ自体がロシア側の譲歩と見ることもできない。ロシア側に返還する気がなければ、交渉はいつまで経っても「交渉中」となることが必至だ。これまでは領土問題がネックになって、安全保障や経済問題などでの両国間の協力推進を妨げてきたが、これからは交渉中ということで領土問題は「棚上げ」されたまま、実質的な協力関係が強化されることになる可能性がある。となれば、事実上、ロシアが望む方向で話が進むだけだ。

 もっとも、だからといって単純に日本側にマイナスという話でもない。これは、領土という双方が妥協しづらい原則的問題を保留したうえで、双方の国益を追求するという外交の知恵であり、必ずしも批判すべきものとは言えない(もちろん、これについては諸論あると思うが)。しかし、領土問題に関しては、新たな進展を期待するのは、やはりまだ早計であろう。

 もちろんロシア側に領土返還の意思があるなら、交渉再開は大きな一歩だが、ロシアのそのような意思を裏付ける根拠はないように思う。

 筆者は二十数年前、ソ連からロシアに国名が変わった時期に数年間モスクワに居住し、それなりに北方領土問題を取材して以降、この問題はフォローし続けてきた。その間、領土交渉進展のニュ-スは何度も繰り返し報じられてきて、その度にその情報の根拠に注目してきたが、日本外務省や一部政治家、メディアなどが推測として発信するのを目にする以外、確たる根拠を見つけられていない。実際、これまで何度も繰り返されてきたのは“期待外れの肩透かし”だった。

 そもそも日本のメディアでは、両国が領土問題で合意できない理由として、日本側が4島一括返還を主張しているのに対して、ロシア側が2島返還で決着したがっているとの見方が大勢だが、実は「ロシアは(特にプーチンは)2島返還で決着したがっている」とする根拠もあやふやなものだ。