マット安川 ゲストは国際問題アナリスト・藤井厳喜さん。国内外から見た安全保障問題の情勢や、日米安保体制をめぐる動きをうかがうとともに、日本がこれから取り組むべき課題をご提示いただきました。

靖国問題のおかげで日中韓の関係はいい方向に進んだ

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:藤井厳喜/前田せいめい撮影藤井 厳喜(ふじい・げんき)氏
国際政治学者。未来学者。詩人。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、米国クレアモント大学大学院で政治学修士号取得。ハーバード大学政治学部大学院へ進み、政治学博士課程修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員、政治学部助手を経て帰国し、テレビ・ラジオのキャスター、コメンテーターなどを務める。『日本人が知らないアメリカの本音』『超大恐慌の時代』『米中新冷戦、どうする日本』など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

藤井 国会議員が靖国に参拝して日本の国益を損なったなんて言う人がいますけど、私はまったく逆だと思う。むしろ日中韓の外交は非常にいい方向に進んだと思います。

 私が一番警戒しているのは、日中韓のFTA、自由貿易協定ですね。TPPも警戒しなきゃいけない要素があると思いますが、日中韓FTAのほうがもっと危ない。

 何より食品です。毒入り餃子みたいなのがどんどん入ってきたら日本人の健康なんか保てません。中国とも韓国とも話し合いが頓挫してFTAが進まないというのは、日本にとって非常にプラスだと思いますね。

 それに韓国は今、経済が苦しいでしょ。するとまたぞろ通貨スワップをやってくれとか外貨を貸してくれとか、言いだしかねない。でも靖国参拝のおかげで韓国としては日本におねだりするわけにいかなくなりました。

 世界中で日本の靖国参拝に文句を言ってるのは、おかしなことにわれわれと戦ったことがない2国だけです。

 大東亜戦争のころ、中華人民共和国はまだ生まれてもいなかったし、韓国なんてその前に国がなくなっちゃってますからね。その2国があれこれ言うのは奇妙なことですよ。公然たる敵国だったアメリカもイギリスもフランスも、何も文句言ってないのにね。

 中国に関して言えば、国交正常化したときの共同声明には内政不干渉ってはっきり書いてあるんです。中国共産党政権はそれに違反しているということです。

 例えばアメリカの大統領にアーリントン墓地に行くななんて言ったら、たいへんなことになります。通常の外交関係ではありえない。中国と韓国が日本の内政に干渉する特権があるように思ってるのはとんでもない間違いです。

 安倍(晋三首相)さんには、今みたいなときこそ参拝してほしいですね。囂囂たる非難の中で行くっていうのが素晴らしいんです。非難にめげず信念を貫いてこそ、安倍さんの政治力は高まる。これはチャンスなんですよ。

財政逼迫のアメリカは韓国から撤退する。そして沖縄からも・・・

 長期的に見ると、私はアメリカが韓国から撤退するんじゃないかと思っています。

 在韓米軍の撤退っていう話はカーター政権のときにちょっと出ましてね、さすがに時期尚早だろうってことで先延ばしになった。でも、2014年には戦時の指揮権を在韓米軍から韓国軍に移すという約束をしてるんです。

 そうなると北朝鮮の脅威をどう抑えるかを考えた場合、あそこに兵隊さんを置かないほうがむしろいいんじゃないかと。いざというときにはグアムや日本から展開できますし。