「ソーシャル化する社会」連載30回目の節目にあたり、慶応義塾大学総合政策学部・環境情報学部(SFC)創設の中心的人物であり、日本のマーケティングにおける第一人者である井関利明慶応義塾大学名誉教授と小川和也による特別対談を4回にわたってお届けしている。
第2回目の本稿では、ソーシャルメディアを活用したコミュニケーションやマーケティングの要諦を中心にお伝えする。(第1回はこちら)
ソーシャルメディア上では「対話」の姿勢が不可欠
小川:多くの人がソーシャルメディアに参加するようになり、その中で行われるコミュニケーションのあり方はまだ試行錯誤している面があると感じます。
もちろん、人と人のコミュニケーションということにおいては、ソーシャルメディアの中だからといって特別なものと捉える必要はないかもしれません。
とはいえ、コミュニケーションがインターネット上で可視化されるようなことはオフラインのコミュニケーションではなかったわけで、そのことは何らかの影響、コミュニケーションの差異を生んでいるのではないでしょうか。
例えば、ソーシャルメディア上のコミュニケーションでは、自分と誰かの対話が他の誰かに見られていたり、予期しない形でその対話の中に誰かが入り込んでくる可能性があります。
井関:影響や差異はあると思いますが、いまはそれでも対話を続けることが必要です。人の意見を聞き、それに反応を続ける。その中から何かが見えてくるでしょう。
例えばそこで議論が巻き起こったとしても、トランスレーターやコーディネーターといった役割を担う人が出てきたり、参加者にとって想定外の気づきなどが生まれてくるものです。そこから新しい発見もある。
小川:今はある意味混沌としていても、それぞれ思い思いに対話を続けていく。試行錯誤する中で、ソーシャルメディアを介したコミュニケーションならではの発見もあるというところでしょうか。
中には対話というよりも、半ば一方的に発信される情報というのもあると思いますが。
井関:それはそれで良いのですが、ソーシャルメディアに参加するうえではやはり対話の姿勢は重要です。それは企業も同じです。ソーシャルメディアがあってもなくても、絶えず市場との対話が必要なのです。