経営力がまぶしい日本の市町村50選(10)

 東京駅から東海道線で1時間半少々の神奈川県足柄下郡にある人口8000人強の小さな町、真鶴。

 豊かな自然や美しい風景に抱かれ、温暖な気候、400年近く前に立てられた五層塔や如来寺、1083年の後三年の役当時の石垣が残る荒井城址公園などに残るロマンあふれる歴史とともに、普段は静かな暮らしがあり、四季折々のイベントや祭りなどの賑わいがあるのが魅力である。

 特に「日本三大船祭り」の1つで、国の重要無形民俗文化財に指定されている貴船まつりは有名だ。

小さいながらも活気ある昔ながらの港町

明るい陽光の中におだやかな佇まいを見せる真鶴漁港

 早朝の朝市、懐かしさを感じる風景、相模湾で採れた新鮮な魚介類・・・。ほっとするような時間が流れる港町・真鶴は、気軽な旅にもってこいの場所である。

 実際に、真鶴の環境に惹かれて町を訪れる人や住む人もいるだけでなく、町の取り組みに関心を持って視察に訪れる自治体や研究者も後を絶たない。2009年頃からは韓国や中国など海外からの関心も呼んでいるくらいである。

 そして相模湾に突き出た真鶴半島は海の幸の宝庫。樹齢350~400年のマツ、クスノキ、スダジイなどの巨木が生い茂る豊かな原生林は、自然観察や森林浴など憩いの場所であるだけでなく、「魚を育てる森」として大切に漁師や住民の間で守られてきた。

 別名「魚つき保安林」とも呼ばれるその森林は、海水温度を一定に保つことで集まるプランクトンや、木々の枝から落ちる虫などを求めて魚が集まることに名前の由来がある。

 毎日水揚げされる新鮮な魚介類は200種にも及び、真鶴半島をめぐる道沿いには活魚料理店や寿司屋が連なり、市場から仕入れた新鮮な魚を提供できる。

町のデザインコード

 真鶴の魅力をソフト面で演出しているのが、「美の基準」と呼ばれるまちづくり条例である。

 先背戸道(路地)、実のなる木、小松石の石垣、懐かしい町並み、網干場や名産の石材を扱う石屋さんなどの仕事場。真鶴町の生活風景が実に何とも言えない味わい深い情緒を感じさせる。