ソニーのシニア エレクトリカル エンジニア、山本斉(やまもと・ひとし)氏は、1990年に入社して以来、20年以上もラジオの電気回路設計に携わっている。
ソニーにとってラジオは、国内シェア60%を誇る重要な製品であるというだけに留まらない。1955(昭和30)年、ソニーが発売した日本初のトランジスタラジオ「TR-55」は、粗製濫造で安くても出来の悪い製品が多いと見られていたメイド・イン・ジャパン製品のイメージを払拭した。ソニーのラジオは、その意味でも重要な意味を持っていると言える。そして山本氏は、ソニーのラジオ作りの遺伝子を現代に受け継いでいるエンジニアの1人である。
ヒット商品やロングセラー商品の開発担当者に「ぜひともここを見て!」というこだわりのポイントを披露してもらうココミテ選手権。今回、山本氏には「乾電池がなくてもラジオが聞ける」をメインコンセプトに開発された非常用ラジオ「ICF-B200」を中心に話を聞いた。
ラジオは、大きな災害が起こるたび、その存在意義を多くの人に認識されており、性能の高い防災ラジオのニーズは高まっているという。東日本大震災でも、停電の中でラジオが被災者にライフラインの情報を伝え、冷静な語りかけで不安を和らげたことは記憶に新しい。
1997年9月1日の防災の日に発売された「ICF-B200」は停電時、手元に乾電池がない場合でも、本体に装備した発電用のハンドルを手動で回転させることにより内蔵の充電池に充電することができ、1分間の充電で約30分間ラジオを聞くことができる(単3形乾電池でも使用することが可能)。また、非常事態を周囲に知らせる非常用ブザーを搭載し、乾電池がなくてもハンドルを回しながら、ブザーを鳴らすことができる。
さらに、2012年1月19日に発売した最新モデル「ICF-B03」は、携帯電話やスマートフォンの充電も可能にした。約5分間の回し充電で連続待ち受けが約30分、連続通話を約3分行うことができる。
ところが山本氏によると、充電器やライトといった機能をつけ加えると、ラジオの音声にノイズを生じさせるリスクがあるという。彼はそのリスクを、どんな方法で乗り越えたのか? 山本氏の“ココミテ話”に耳を傾けてみよう。
ラジオは基本的に
電気屋とメカ屋の2人でつくります
──山本さんは、どんな形で「ICF-B200」「ICF-B03」の開発に携わったんですか?