懲役2年半の実刑判決を受けて服役していた旧ライブドアの堀江貴文元社長が3月27日朝、収監先の長野刑務所から仮釈放された。とりあえずおめでとうと言いたいが、この事件は彼個人の問題を超えて日本経済に大きなダメージを与えた。

 ライブドア事件の起こった2006年ごろには、小泉政権の下で日本の資本市場でも動きが出ていたのだが、この事件後の村上ファンド事件などで企業買収を犯罪のように考える風潮が強まり、資本市場の改革も止まってしまった。それ以来の歳月は、日本資本主義の「失われた7年」だった。

ライブドア事件で資本市場は死んだ

 ライブドア事件で問われた粉飾決算は53億円と、2000億円を超えたカネボウなどに比べれば粉飾決算としては小規模であり、組織的犯罪でもなく悪質性も低い。それが実刑になった量刑の不自然さもさることながら、企業グループ内部の利益処分で刑事罰に問われたという事実が、多くの企業に恐怖を与えた。

 しかも当初は「暴力団がらみの大規模な犯罪」とか「海外まで含めたマネーロンダリング」などが取り沙汰されたが、結果的にはそういう事実は何も出てこなかった。当時の東京地検特捜部の大鶴基成部長は、事件を摘発した動機を次のように語っていた。

額に汗して働いている人々や働こうにもリストラされて職を失っている人たち、法令を遵守して経済活動を行っている企業などが、出し抜かれ、不公正がまかり通る社会にしてはならないのです。

 

 このような幼稚な正義感に基づいて「額に汗しないで儲けている」堀江氏や村上氏を摘発しようという検察の筋書きが、この事件の背景にあった。その結果として企業買収はほとんどなくなり、多くの企業が買収防衛策を定款で定め、日本の資本市場は死んだ。

 それ以来、日本で行われる企業買収の時価総額は世界の3%以下で、主要国で最低だ。特に海外からの買収額がGDP(国内総生産)の2~3%と、極端に少ない。これは買収防衛策を講じるまでもなく、日本の企業には株式の相互持ち合いという強力な買収防衛策があるためだ。