中国は経済の高度成長により急台頭しており、2008年から始まった世界的な金融危機にあってもいち早くV字型回復を遂げ注目されている。現に2009年のGDP成長率は8.9%に上り、改革開放政策30年の成果を見せつけた。
世界で台頭する中国脅威論
中国は世界の工場と言われる時代を経て、今日、世界経済の牽引車役を担い、米中G2時代ともてはやされている。
そこで、台頭する中国はやがて世界に覇を唱えるのではないか、と中国脅威論が浮上している。しかし同時に、中国には共産党統治が安定的に続くのか、政権の正統性や執政の正当性についても問われ始めている。
今日の中国は、社会主義の旗印を捨て切れない政治体制と、自由競争を原理とする市場経済が同居するという特殊性を抱えている。
さらに中国は経済成果の多くを国際交易に依存しており、その分だけ国際的な協調が求められてくるが、同時に大国としての威信にもこだわって軍事力の強化を急いでおり、それが国際社会から警戒されるというジレンマの中にある。
特に、故・毛沢東国家主席が口癖にしていた「政権は銃口から生まれる」が浸透している中国では、軍事力を重視しており、「党の柱石」として今日でも共産党統治を支えている。
強大な軍事力を中国はどのように使うのか
これらから軍事力の強化を急ぐ中国は、今後世界に対してどのように振る舞ってくるのか、国内体制の安定と軍事力の強化動向が絡んだ対外戦略の展開が注目される。本稿では中国がどのような国家目標を掲げ、軍事力強化の基盤となる富国強兵戦略をどう展開しているか、を問題意識としてまとめたい。
その際、今日、共産党統治の正統性と執政の共産政権の正当性が問われる中で、軍事力建設や対外戦略の基盤となる経済政策と国内政治の安定問題に焦点を当て、中国が抱える基本的な問題を中心にまとめたい。
そこで本稿の構成は、まず中国という国家の成り立ちの特性などの基礎的な背景を整理し、次いで経済成長著しい中国の現状を光と陰の両面から探る。そして中国が掲げる国家目標の実態を整理し、現に進めている国家戦略の実態について国内問題を中心に検討する。