安倍晋三内閣は「危機突破内閣」と自称して、13兆円の補正予算や日銀との「共同声明」を出し、筋金入りのリフレ派を日銀総裁に任命するなど、いろいろな景気対策を矢継ぎ早に打ち出している。おかげで株式市場は活況を呈しているが、これは本物だろうか?
政治家は何となく物価が下がるのが不況だと思い込んでいるようだが、所得が同じなら、物価が下がると実質所得(名目所得-物価上昇率)は上がる。デフレは消費者にはいいことなのだ。彼らの信じている神話の実態をデータで見てみよう。
【神話1】 円安・株高の原因はアベノミクスである
まず次の図1を見ていただこう。ユーロ/円で見ると、2012年8月にECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が、南欧諸国の国債を買い入れて財政支援するとの意向を示したことがきっかけで、ユーロが9月頃から上がり始めた。これはユーロのリスクを避けて円に逃避していたリスクオフの資金がユーロやドルに戻り始めたためだ。
安倍氏が「日銀が輪転機をぐるぐる回せばデフレを脱却できる」と言い始めたのは、総選挙中の11月下旬だから、そこまでにユーロは1割近く上がっている。株価はこのへんから円安を好感して上がり始めたが、それは為替の効果であって、アベノミクスの効果ではない。日本の消費者物価は、安倍政権が発足してから下がっている(図2参照)。
【神話2】 日本はデフレだから不況になる
日本は「デフレ」なのだろうか。図2を見れば分かるように、世界各国で物価上昇率の下がる“disinflation”が起こっている。インフレ目標は、物価を抑制するための目標だが、日本はここ数年の平均は-0.1%で、むしろ安定していると言っていい。なんでわざわざインフレにする必要があるのだろうか。
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