北米報知 2013年1月1日1号
12月半ば。熱戦が続く世界最高峰のバスケットボールリーグNBAを目指し、シアトルでトレーニングを続ける日本人選手が2人いる。「自分の夢をあきらめない」、「子どもに夢を追いかける大切さを伝えたい」――。厳しい競争の世界へ挑戦する両選手を追った。
2004年からNBA挑戦を続ける阿部理選手。現在42歳。約2メートルと日本人選手でも長身でシュート力にも定評がある。所属チームで活躍をみせ、日本代表にも長らく選ばれた。個人タイトルも数多く獲得した。
NBA挑戦では壁にぶつかり続けた。バーンアウト症候群、脳腫瘍、3度にわたる膝の手術。米国への入国拒否も受けた。バスケットボール人生は脅かされ続けた。
引退勧告を受け、自身も引退を考えた。だがそこで紹介された医師から「命」と「選手生命」を救われたという。個人的な活動にも影響を受け、「いじめ撲滅運動」に取り組み始めた。故郷の仙台市では東日本大震災後、チャリティゲームを行うなど支援活動も続ける。
再渡米は去年8月。NBA選手も指導する個人トレーナーのもとトレーニングを開始した。NBA入りへの鍵は自身のシュート力を生かす技術。現在は「How to create the shot」をテーマに練習に励む日々だ。
「NBAのスカウトの人が直接来るわけではないし、自分でこじ開けなければならない」と話し、ロサンゼルスのNBAエージェントを訪れるなど精力的に動く。体調はこれまでの渡米時で「一番よい」と自信をみせる。
「夢をあきらめない一番の思いは、子供の時からのあこがれの舞台に立ちたいという思い」と阿部選手。「これまでにも多くの奇跡が起こってきたが、今度はNBAのコートで奇跡を起こす番だと思っています」と挑戦へみなぎる強い決意を語った。
人間教育、追い続ける目標
当地で阿部選手と練習に励む飯島康夫選手。バスケットボールを始めたのは高校の時。「当時は不良少年だった」が、あいさつ、礼儀など人間教育を重視する部活顧問との出会いが転機となった。
千葉県代表に選ばれ、2010年に国体優勝。昨年は米独立リーグ「国際バスケットボールリーグ(IBL)」を日本トルネードズの選手として経験。NBAサマーリーグにも参加した。2カ月前に再渡米、来シーズンのNBA入りを目指しトレーニングに励んでいる。
「自分より上手い人は日本にいますし、米国ならなおさら。NBAに入る確率が1パーセントだとすると、そこに向かって世界中からバスケットボーラーがやってくる。他の選手よりも『素人』に近い分、自分をもっと律しなければ」と練習を通じて語る。