1月26日、北大西洋条約機構(NATO)はトルコ南部アダナに配備を進めていたパトリオット地対空ミサイルが運用可能となったことを発表した。シリアとの国境近くにさらに5基が配備される予定だという。

 目的はトルコ防衛。しかし、飛行禁止空域が設定されれば攻撃に利用されるのでは、との懸念をシリアは持っているようだ。

検問所や軍人がやたらと多いトルコ南東部

東トルコ、クルドの街

 配備に先立ち、国境地帯には完全武装のトルコ軍が派遣されたというが、トルコ南東部はもともと軍人だらけの地。

 トルコ国内に1000万人以上はいると言われるクルド人が数多く住む「クルディスタン」と呼ばれる地域にあたり、その人権改善を訴えるクルド労働党(PKK)がトルコ政府への挑発行為を繰り返しているからだ。

 そのため、この地を訪れると検問所や軍服がやたらと目につく。

 『遥かなるクルディスタン』(1999)は、クルド人のそんな厳しい現実を描き、出品された1999年のベルリン国際映画祭では、ベスト・ヨーロピアンフィルム賞と平和賞を受賞した。

 しかし、その上映当日、会場は厳戒態勢となっていた。ちょうど、アブドゥラ・オジャランPKK議長が逮捕されたばかりで、ドイツで生活している者も多いトルコ人の反応が心配だったのだ。議長は1998年までの活動拠点シリアを出国、ケニアへと移っていたところを身柄拘束されていた。

 トルコが、今一番恐れているのは、泥沼の内戦の結果、シリア北部がクルド人勢力のものとなり、国境近くにクルド人自治州ができること。

 そして、「国を持たない中東の民」クルド人が多く住むイラン、イラク、シリア、そしてトルコにまでいたる広範囲の「クルディスタン」にクルド人国家が建設されるという近未来図だ。

 『遥かなるクルディスタン』は夕陽まぶしい国境地帯を映し出し、物語を終える。